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自己発電する超軽量ペーパー製デバイス

2017.7.18

超軽量ペーパー製デバイス
菱形に組まれた紙製デバイスを数分間伸縮させることで、リモコンのような小型機器を充電できた。

スマホにタブレット、各種センサーなど、私達は膨大な数の電子機器に取り囲まれて暮らすようになっている。電子機器がネットワーク経由で結びつき、相互に自律制御を行う「IoT」も着々と広がりつつある。
あらゆる領域のデジタル化、ネットワーク化は猛スピードで進んでいるが、大きな問題が1つ残っている。それは、電源だ。
電子機器を駆動させるためには電源が欠かせないが、半導体に比べてバッテリーの進歩はずっと遅い。CPUの低消費電力技術は進化しているものの、スマホを常に使いたいユーザーは結局モバイルバッテリーもいっしょに持ち歩く羽目になっている。
重いバッテリーから人間を解放するかもしれないと期待されているのが、エネルギーハーベスティングである。これは環境中から微小なエネルギーを取りだして利用する技術の総称で、熱や電波、光、振動を電力に変換する。太陽電池も一種のエネルギーハーベスティング技術といえるだろう。
近年注目を集めるようになったのが、「triboelectric nanogenerator(TENG)」である。これは振動発電の一種で、ポリマーなどの素材をこすり合わせて摩擦によって発電を行うというものだ。
Zhong Lin Wang博士、Chenguo Hu博士ら中国の研究チームが開発したのは、自己発電機能を備えた紙製デバイス。数インチ程度にカットされた紙を菱形に組み合わせた構造になっている。外面は金と黒鉛でコーティングされたサンドペーパー、内面は金とフッ素化エチレンプロピレンフィルムでコーティングされた紙とでできている。
従来のTENGデバイスは、重いアクリルでできており、センサーなどの小型電子機器を充電するのにも数時間かかっていた。今回開発されたTENGデバイスは従来に比べて15倍ほどの発電能力を持ち、リモコンや温度センサー、時計のような小型機器であれは数分程度で充電が可能になった。研究チームは、このTENGデバイスを財布などの内部に貼り付けて発電させるといった使い方を提案している。
スマートデバイスの低消費電力化も進んでいることを考えると、バッテリーから解放される日も遠くないかもしれない。

(文/山路達也)

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