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彗星と土星の衛星タイタンを目指す、
NASAの新プロジェクト候補

2018.2.5

土星の衛星タイタンにドローンを送り込む、Dragonfly計画のイメージ。
土星の衛星タイタンにドローンを送り込む、Dragonfly計画のイメージ。地表や大気から試料を採取して居住可能性も探るという。by NASA

NASAのニューフロンティアミッションは、太陽系内の惑星探査において画期的な成功を収めてきた。探査機ニューホライズンズによる冥王星探査(今後、カイパーベルト内の太陽系外縁天体を探査予定)、探査機ジュノーによる周回軌道からの木星観測の成功はまだ記憶に新しい。2018年には、探査機オシリス・レックスが小惑星ベンヌに到着して試料採取を行うことになっている。
2017年12月、NASAは4番目のニューフロンティアミッションの最終候補として、CAESARとDragonflyという2つのコンセプトを選定した。
CAESAR(Comet Astrobiology Exploration Sample Return)のターゲットは、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星だ。2014年にはヨーロッパ宇宙機関の探査機ロゼッタがチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に着陸しているが、CAESARではこの彗星の中心部から試料採取し、地球に持ち帰ることを目指す。彗星から試料採取できれば、太陽系の成り立ちや、地球の海、生命がどうやって生まれたかなどの解明につながると期待されている。
一方、Dragonflyのターゲットは土星の衛星タイタンだ。タイタンの何カ所かにドローンを送り込み、試料採取を行う。大気や地表の状態を調査し、タイタンの居住可能性を探る。 NASAでは、これら2つの計画についてコンセプトをさらにブラッシュアップし、2019年春にどちらの計画を継続するかを決定する予定だという。
なお、上記の2つと同時に、将来のミッション候補になるコンセプトが選ばれている。
1つは、土星の衛星エンケラドスで生命の存在や居住可能性を探るELSAHで、費用対効果の高い探査方法の開発を行う。
もう1つVICIは、高温高圧の過酷な金星の環境で、岩石の組成を調べるカメラを開発するというもの。
トランプ政権によってNASAの宇宙探査プロジェクトの行方は不確かになってきているとも言われているが、宇宙や生命について新たな知見をもたらしてくれる、これらの新プロジェクトに期待したい。

(文/山路達也)

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