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岩石の内部に入り込む3Dバーチャルツアーで、
化石の謎を解明する

2018.5.11

GIRIを使って、生物の化石から作成した3Dモデル。脆いサンプルの内部構造も作れる。
GIRIを使って、生物の化石から作成した3Dモデル。脆いサンプルの内部構造も作れる。
by Princeton University

岩の内部に入り込んで、構造を思う存分探究したい。それは、地質学者の夢だ。
X線撮影技術を始めとする技術の進歩によって、地質学研究は大きく進展してきた。岩石をX線で断層撮影すれば、外から内部構造はある程度把握することができる。しかし、X線撮影で分析できる対象物がすべてではない。例えば、石灰岩の中に埋もれた化石。X線で撮影しても石灰岩と化石の密度差は区別できないし、脆くなった化石だけを取り出すこともできない。
こうした課題を解決するために、プリンストン大学のAdam Maloof博士、Akshay Mehra博士が開発したのが、「GIRI」(Grinding Imaging and Reconstruction Instrument)と名付けられた装置である。
GIRIの仕組みは、シンプルだ。サンプルの岩石など、数マイクロメートルから数十メートルの厚さにスライスし、高解像度カメラで撮影する。撮影された画像をコンピュータ上で処理し、3Dモデルを作成する。1インチ(2.54センチメートル)のサンプルを、1500回にスライスする場合、研削と撮影で1日半程度で処理できるという。
X線で断層撮影する場合、サンプルとなる物質の密度差がないと3Dモデルを作れないが、GIRIの場合は固体であれば3Dモデルを作り出せる。研究チームが開発したソフトウェアは、機械学習アルゴリズムを使って化石と周囲の岩石を明確に区別してモデル化する。研究者は、3Dモデルを拡大縮小したり、いろんな角度から眺めることができる。岩石内部をバーチャルツアーで探索できるわけだ。ただし当然のことながら、GIRIで3Dモデルを作ると、元のサンプルは破壊されることになる。
研究チームは、GIRIを使ってCloudinaという、約5億8500万年前に生きていた生物の化石を調査した。Cloudinaはある地域のサンゴ礁を作ったと考えられていたが、3Dモデルを作って内部構造を分析した結果、サンプルが別の地域から運ばれてきたことがわかったという。
岩石の内部構造をより詳細に分析できるようになったことで、地球上での生命進化や絶滅の謎も解明が進むだろう。

(文/山路達也)

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