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金のナノ粒子を水滴で作る新技術は
「グリーンケミストリー」の時代を開く

2018.6.4

水滴を使った新たなプロセスによって作成された、金のナノ粒子とナノワイヤ
水滴を使った新たなプロセスによって作成された、金のナノ粒子とナノワイヤ。

かつて、金は化学反応を起こしにくい物質だと考えられていた。宝飾品として金製品が人気なのも、見た目が美しいからだけでなく、腐蝕や参加しにくいからだ。金箔入りの酒を飲めるのも、体内で金が化学反応を起こさず、そのまま排泄されるからである。その分、健康に良いこともないが。
しかし、今や金は、先端科学に不可欠な物質になっている。ナノスケールのレベルだと金は極めて化学反応を起こしやすく、触媒として幅広い分野に使えることがわかってきたからだ。金のナノ粒子は、高感度センサーやドラッグデリバリーシステムにも応用されている。
これからますます応用範囲が広まっていくことが確実な金ナノ粒子だが、製造するには有害な化学物質を使う。塩酸中で塩素と金を反応させて塩化金酸を作り、水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤と反応させる必要がある。
スタンフォード大学Richard Zare教授らの研究チームによって、有害な化学物質を使わずに金ナノ粒子を作成できる可能性があることがわかってきた。
これまでのプロセスでは、還元剤から塩化金酸に電子を移動させることで、金の原子を遊離させてナノ粒子を作っていた。
研究チームは、塩化金酸と水素化ホウ素ナトリウムのごく微小な液滴中では、一般的な溶液よりも10万倍以上早く金のナノ粒子が成長することを発見。さらに興味深いことに、還元剤の代わりに水を使った対照実験でも、金のナノ粒子が作られることがわかったのである。どうやら微小な水滴と大量の水では、化学反応が根本的に異なっているようなのだ。
新しく発見された反応を現在の金ナノ粒子作成プロセスと同等のレベルまでスケールアップできるかどうかはまだわからないが、実現できれば環境負荷を大きく減らすことが可能になる。金ナノ粒子以外の物質についても、微小液滴を使った化学反応が検討されるようになるかもしれない。

(文/山路達也)

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