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しなるダイアモンドが高精度のセンサーになる

2018.6.18

水滴を使った新たなプロセスによって作成された、金のナノ粒子とナノワイヤ
ナノスケールレベルでは、ダイヤモンドの針は歯ブラシの毛のようにしなる。
by MIT

ダイヤモンドは硬い物質の代名詞となっており、天然素材の中では最高の硬度を誇る。その一方、ダイヤモンドは脆い物質でもある。金づちで思い切り叩くと、簡単に砕けてしまう。
硬度は高いが、弾性は低いのがダイヤモンドなのだ。
このダイヤモンドの針が「しなる」といったら、驚きだろうか?
ダイヤモンドの針といっても、アナログレコード用のレコード針の話ではない(レコード針に使われているダイヤモンドは微小なチップであり、針全体がダイヤモンドでできているわけではない)。
MITのMing Dao博士らの国際研究チームは、幅数百ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)という、針状のダイヤモンドは極めて高い弾性を持っており、壊れずに9%も伸縮することを明らかにしたのである。
研究チームは、化学気相成長法(ガス状にした材料を基板上に供給し、膜を堆積させる方法)によって、針状のダイヤモンドを作成。ダイヤモンドチップの薄膜高度計を使って、針状ダイヤモンドを曲げたところ、壊れることなく最大9%伸縮することがわかった。
ダイヤモンドが高い弾性を示すのは、針全体が1つの結晶からできている単結晶ダイヤモンドの場合である。複数の結晶からできた多結晶ダイヤモンドが耐えられるひずみは、単結晶の半分未満にすぎない。
研究チームによれば、9%もの弾性ひずみがあるダイヤモンドは、これまでのダイヤモンドはまったく異なる材料特性を持つと考えられるという。
ダイヤモンドをドラッグデリバリーシステムなどに応用する研究はすでに始まっているが、今回の研究結果によってマイクロマシンや超微細な高感度センサーなどへの応用が広まることになると予想される。

(文/山路達也)

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