Science News

シート状の原子層を自在に積み重ねる
ロボットシステム

2018.7.10

原子層の積層を自動的に行う「複合原子層作製システム」
原子層の積層を自動的に行う「複合原子層作製システム」
by Institute of Industrial Science, the University of Tokyo

原子1層からなる単原子層物質は、世界中で猛烈な勢いで開発が進められている。例えば、単原子層物質の代表とも言えるグラフェンは、炭素原子が2次元のシート状に連なった物質だが、通常の炭素とはまったく異なる物理的な特性を持つ。ダイヤモンドよりも強く、熱伝導や電気伝導もトップクラスであり、半導体材料として有望だと考えられている。
グラフェン以外にも、ケイ素の単原子層物質シリセン、ホウ素の単原子層物質ボロフェンなどさまざまな単原子物質が発見され、これまでの常識では予想できない性質を持つことが明らかになりつつある。
近年では、複数の単原子層物質を組み合わせた「複合原子層」を作る研究も行われるようになってきた。複合原子層によって、個別の単原子物質にはない特徴を持った物質を作り出せると考えられている。
しかし、単原子層物質を作り、さらにそれらを積み重ねて複合原子層を作るのは、大変に手間のかかる工程である。原子層の組み立てはすべて手作業で行う必要があり、熟練の技術者でも作成に長時間を要していた。
東京大学・生産技術研究所の増渕覚特任講師らの研究グループが開発したのは、複数の単原子層物質を積み重ねられるロボットシステムだ。
このシステムは、シリコン基板上に形成された結晶を光学顕微鏡で探索して、写真を自動解析、得られた情報を元に原子層のカタログを作成する。作成されたカタログから任意の結晶を選択して組み合わせると、システムは有期樹脂の上に結晶を積層していく。実験では、グラフェンと六方晶窒化ホウ素が交互に29層積み重なった複合原子層を8時間以内に作成することに成功しており、これは熟練研究者の20倍以上の効率だという。このシステムによって単原子層物質の研究は大幅にスピードアップされ、新しいフェイズを迎えたと言えるだろう。

(文/山路達也)

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