No.006 ”データでデザインする社会”
Scientist Interview

オープンデータの課題と対策

──自治体でオープンデータに取り組む際に苦労するところや課題はなんでしょう?

牧田 ── まずはとにかくデータ化するところですね。データに緯度経度をつけるなど、付加する様々な要素があります。あとは、各担当課に、「XMLにしてくれ」と言っても嫌がられるのは目に見えているので(笑)、「ウェブサイトに既に公開されているものとかだったら出しても問題ないですよね」、ということで、公開できるデータを増やしていきました。正しいものを出す、というのが公共機関のもともとの考え方なので、リリースして修正してという開発のプロセスはなかなかなじまないというところもあります。だれがメンテするの? ということになってしまいがちです。

福野 ── 過去の統計など、もう変わらないデータというのは比較的だしやすいですね。メンテナンスする必要が無いですから。今ある公衆トイレの場所、ということになると、新設されたら書き換えなくてはいけないので少し難易度があがります。示された場所に行ったときにそこにトイレが無かったら、責任問題のような話になるので、それを鯖江市はさくっと乗り越えてくれました。

──国の方針が出るとやはり進み方が違うのでしょうか?

福野 ── それは全然違うと思います。2012年にまず鯖江市がオープンデータをやりましたが、鯖江だけがいくらやっても、ビジネスにはなりません。そのデータ形式が日本中、世界中に広まってようやくアプリケーションに可能性が出てくる。まず鯖江市が取り組んで、じゃあ次は隣の市や県に広げていこうということで、牧田さんとも一緒にいろいろ回ったのですが、なかなか難しい状況でした。しかし、世界最先端IT国家創造宣言*13やオープンデータ憲章*14などで、国としてもこれをやるという方向性が明確に出てから、日本中で一気に30都市まで増えました。

──福井県もオープンデータに積極的になってきているようです。

福野 ── 乗ってきていますね。2012年に牧田さんと県に行き、簡単なところでいいからオープンデータをはじめましょう、と提案をしました。その時はまだ少し早かったのですが、2013年になって、県としてもオープンデータを、ということになり、県全体で積極的になっているように思います。

[写真]福井県オープンデータライブラリの「防災」カテゴリ
http://www.pref.fukui.lg.jp/doc/toukei-jouhou/opendata/list_1.html

県からもけっこう面白いデータが出ています。全体の業務からすると勿論ごく一部ですが、現在240個くらいのデータがオープンになっています。行政の仕事が多岐にわたることがわかります。

例えば、県内のある地域からある地域に人がどう移動しているかとか、どの地区にどんな鳥獣被害が出ていて、捕獲した数はいくつかとか。それでこのデータとこのデータを組み合わせるとこんなことができる、という様なことを理解してもらうために、オープンになっているデータをわかりやすくカードにしてゲーム化したんです。

これを使って遊んでいると、いろいろなアイディアが膨らんで楽しいです。観光地の情報などはかなり使えると思います。

[ 注釈 ]

*13
世界最先端 IT 国家創造宣言: 2013年に策定された国のIT政策の戦略。2020年までに世界最高水準のIT国家となるために必要となる政府の取組等を取りまとめたもので、「公共データの民間解放」などが盛り込まれている。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/pdf/20130614/siryou1.pdf
*14
オープンデータ憲章: 2013年のG8サミットで採択された首脳宣言に盛り込まれた憲章。オープンデータを「情報時代の不可欠な資源」と位置づけ、その活用は市民生活の向上や技術革新、経済成長に寄与するとされている。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/densi/dai4/siryou3.pdf

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