No.004 宇宙へ飛び立つ民間先端技術 ”民営化する宇宙開発”
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加熱する宇宙旅行ビジネス

弾道飛行には、日帰り旅行のようなお手軽さがあるものの、どうせなら、もっと長時間の無重力体験を楽しみたい、という人も多いことだろう。残念ながら、有人の周回飛行を提供できる民間の宇宙船はまだないのだが、実は国の宇宙船を使った宇宙旅行サービスは、すでに実施されている。

米スペース・アドベンチャーズはロシアと契約。ソユーズに乗って、国際宇宙ステーション(ISS)に短期滞在できるサービスを提供している。旅行費用はざっと数十億円であるが、これまで、米国の実業家デニス・チトー氏のフライト(2001年)を皮切りに、計8回の宇宙旅行を実現させた。英国のソプラノ歌手サラ・ブライトマン氏も契約したことで話題となった。

この中に日本人はまだいないが、1990年、当時TBS社員だった秋山豊寛氏は「宇宙特派員」としてソユーズに乗り込み、宇宙ステーション「ミール」から宇宙の様子をレポートした。"旅行"ではないかもしれないが、費用を払って民間人が宇宙に行ったという意味では、宇宙旅行の先駆といえるかもしれない。

なお今後、同社は米ボーイング社が開発中の宇宙船「CST-100」を使った宇宙旅行も計画中。CST-100はソユーズと同じカプセル型だが、定員は最大7名と、より大型の宇宙船になる予定だ(ソユーズは3名)。テストフライトは2016年の実施を予定している。

スペース・アドベンチャーズ
http://www.spaceadventures.com/

ところで前述のように、有人の周回飛行のためには国が開発した宇宙船/ロケットを使うしかないのだが、これを民間で初めて実現しそうな企業として、有力視されているのは米国の宇宙ベンチャー、スペースX社である。

同社のロケット「Falcon 9」と宇宙船「Dragon」は、今のところ無人の打ち上げしか行っていないものの、Dragonは大気圏への再突入が可能な設計で、有人飛行も視野に入れる。すでにISSへの無人フライトに成功しており、技術力の高さは実証済み。まだ初の有人飛行がいつになるのか、具体的なスケジュールは発表されていないものの、今後に注目だ。

民間による宇宙船と来たら、次は民間による宇宙ステーションである。この開発に取り組んでいるのは米ビゲロー・エアロスペース社。同社の「BA 330」(最大6名が滞在可能)は、軌道上で膨らませる仕組みになっており、コンパクトに打ち上げることが可能。1区画(110立方メートル)あたりの利用料金(2カ月)は、2,500万ドル(約24億円)とのことだ。

このテストモジュールが、2015年に打ち上げられる予定。重さは約1.36tで、膨張時のサイズは長さ4m×直径3m程度になるという。ISSに結合され、実際に2年間使ってみて、性能を検証する計画だ。

ビゲローのテストモジュール「BEAM」の写真
[写真] ビゲローのテストモジュール「BEAM」
Credit:NASA/Bill Ingalls

ビゲロー・エアロスペース
http://www.bigelowaerospace.com/

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