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「ナノ地震」が、イメージセンサーや
太陽電池性能向上のカギを握る

2015.6.1

二次元物質は既存の物質にはないユニークな性質を備える。これらの物質を振動させることで、電子的な性質を変えられることがわかってきた。

材料研究では、二次元物質が注目を集めている。これは原子一層あるいは数層分の厚みしかない物質で、炭素原子のシートであるグラフェンがよく知られている。グラフェンに代表される二次元物質は、強靱であること、電子の移動速度が速い、ユニークな光学的特性を持つなど、既存の物質にはない数々の特徴を備えており、幅広い応用が期待されている。先述の記事の通り、グラフェンは半導体材料として使いづらいということがわかってきたため、半導体分野では二硫化モリブデンや黒リンなどにも注目が集まっている。
オーストラリア RMIT(Royal Melbourne Institute of Technology)の研究チームの発見は、二次元物質の応用範囲をさらに広げることになりそうだ。Amgad Rezk博士、Sumeet Walia博士らが発見したのは、新材料ではなく、二次元物質の性能を向上させる方法である。
研究チームは、方向や強度を適切にコントロールした音波によって、二硫化モリブデンに微細な「ナノ地震」を起こし、電子的な性質を変化させることに成功した。二硫化モリブデンには、光子を吸収した後、再放出する性質があるのだが、ナノ地震の強度を上げるほど、より多くの光子が放出されることが確認されたのである。音波による振動を止めると二硫化モリブデンの性質は元に戻り、振動によるダメージも見つからなかった。この手法は、二硫化モリブデンだけでなく、グラフェンやそのほかの二次元物質にも適用できる可能性がある。
二次元物質の電子的な性質を向上させることで、例えば暗いところでも鮮明に撮影できるイメージセンサーや、エネルギー変換効率の高い太陽電池などに応用できると期待されている。

(文/山路達也)

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