プラットフォームビジネスとしての展開を目指す
低コストで高性能な衛星ができても、それだけではビジネスは成立しない。経済産業省は、「官民一体となった市場開拓」というフレーズを掲げて、各国への売り込みを図っている。衛星だけでなく、打ち上げサービス、人材育成まで含めた宇宙システムをパッケージにして売り込みたい考えだ。
地球観測衛星については東南アジアや中東、南米を中心にニーズ調査を行っており、ベトナムとはすでに地球観測衛星の調達と宇宙センター建設に関して、ODA(政府開発援助)の署名を2011年に済ませている。宇宙基本法以前だと、ODAは橋や道路などのインフラ整備に使うことはできたが、宇宙は対象になっていなかったのである。
ベトナムでは気候変動のためか、自然災害の被害が増えており、同国政府は人工衛星を使って災害管理を行おうとしている。事業概要では、「日本の小型レーダー人工衛星2機」を調達することになっている。また、ベトナム政府は2020年までの国産人工衛星打ち上げを目標に掲げており、日本のメーカーが技術供与を行う予定だ。
2013年1月、ASNARO-1を開発したNECは、人工衛星の組立や試験を行う新工場を建設すると発表した。既存工場と合わせて最大8機の人工衛星を組み立てができる態勢を整えて、人工衛星関連ビジネスの受注を拡大する予定だ。現在、NECにおける宇宙事業は約500億円規模で、全事業に占める割合は2パーセント弱。これを2020年までには倍増して1000億円規模にするという。
こうした海外展開を実現させるためにも、まずは1号機のASNARO-1を成功させることが必須だ。ASNARO-1はすでに完成しており、画像処理・配信システムなどを手がけるパスコが運用することになっている。
ASNARO-1は2013年度中の打ち上げを目指している。現在のところ、ASNARO-1のコストパフォーマンスは(きちんと想定通りの性能が出せれば)、世界でもトップレベルにあるが、他の国でも小型衛星の開発は急速な勢いで進んでいる。
日本の宇宙ビジネスははたして花開くのか。その試金石となるASNARO-1の打ち上げを、関係者は固唾をのんで見守っている。