製品競争力

IoT、AI、5G の普及により加速するデータ社会において、半導体やフラットパネルディスプレイの需要がさらに増加し、多様化とともに高い性能が求められてきています。東京エレクトロンでは、最先端の研究開発を推進し、プロダクトマーケティングを通じて変化の激しい技術革新の要請に応えるとともに、さまざまな用途に対応した装置やサービスを提供します。また、製品や事業所の環境負荷低減に継続的に取り組むとともに、より消費電力の低いデバイス開発に貢献する技術を提供することで、地球環境の保全に努めます。最先端技術を備えた付加価値の高いベストプロダクトをタイムリーに創出し、またそれを支えるベストサービスを提供し続けることにより、産業や社会のさらなる発展に寄与します。

研究開発

未来を見据えた研究開発

IoT時代の到来により、ライフスタイルやビジネスモデルが大きく変化する中で、半導体の用途はあらゆる分野で拡大し、より一層高度な技術が要求されていくと予測されています。当社では、人々の生活においてエレクトロニクスがより身近になり、半導体の必要性がさらに高まる時代に求められる新たなテクノロジーと、当社の貢献についての議論を継続的に進めています。こうした議論をまとめた「TEL Technology Vision 2030」を社内向けに発信し、周知やフィードバックを図るとともに、未来を見据えた研究開発に全社を挙げて取り組んでいます。

開発体制

半導体市場は、微細化技術による高性能化に加え、より柔軟な設計に対応した製造技術による新たなデバイスの出現、またIoTの発展とともに大量のデバイスが必要となる市場の成長など、より一層の多様化が進んでいます。それに伴い、製造技術においても多様化が求められる中で、当社は次世代へ向けた技術開発や技術融合を推進し、開発生産部門が事業部門と連携しながら、付加価値の高い製品をタイムリーに市場投入する体制を構築しています。


また、当社では2018年に設立されたCorporate Innovation本部を中心に、成膜技術やエッチング技術をはじめとする幅広い半導体製造装置ラインアップをもとにしたプロセスインテグレーション機能のさらなる強化を実践しています。2020年1月には、米国内の製造機能の最適化、オペレーション効率化を図るためTEL Manufacturing and Engineering of Americaを設立しました。


現在は、AIを活用した制御ソフトウエア開発のさらなる強化に向けて取り組み、製造プロセスのテスト段階において、使用するウェーハを従来の5ロットから1ロットまで低減することができています。また、薬液についても2割程度の削減をAI技術によって可能とし、省資源化に貢献しています。


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Shift Left

当社は、製品開発プロセスの初期工程にリソース(技術・人材・費用など)を投じるShift Leftを重要視し、展開しています。次世代を超え、その先までも見据えた研究や、開発スピードのさらなる加速を目指すお客さまと技術ロードマップをともにつくり、その実現に必要となる各種技術の開発に取り組んでいます。

2019年度には、製造装置の省スペース化に対するお客さまのニーズの高まりに対応すべく、クリーンルームを最大活用し、より生産性の高い装置を提供することで、装置単位面積当たりの効率化をおこないました。当社独自の技術提案により、お客さまの工場や開発・研究所に早い段階で評価機を納入するオンサイトコラボレーションを推進し、技術開発から量産装置化までの期間短縮と効率の最大化を実現しています。

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プロダクトマーケティング

当社では、営業部門とプロダクトマーケティング部門が各々の役割を適切に果たすことで、効果的な製品開発を推進しています。納入済みの既存製品における改善、改良や機能追加については、営業部門が主導となり、お客さまの声を開発部門に届けます。一方、新規製品の開発については、プロダクトマーケティング部門が主導となり、市場動向や競合他社の分析を踏まえた指針を開発部門と共有することで、お客さまの価値創造に寄与する製品開発につなげます。また、開発部門から提案される企画の製品化や機能の追加について検討するとともに、パートナー企業やコンソーシアムとの連携に関する戦略の立案もおこないます。プロダクトマーケティングの活動を通じて、当社が重要視するShift Leftの効果的な推進につなげています。

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* CIP: Continuous Improvement Program

知的財産マネジメント

当社の知的財産活動は、知的財産の適切な保護を通じて事業活動をサポートし、企業収益の向上に貢献することを基本方針としています。開発・製造拠点および本社に配置された知的財産担当者が、研究開発からマーケティングまでさまざまな角度から各案件を検討し、技術・製品戦略に沿った知財ポートフォリオを構築することで、競争力の向上に努めています。知的財産領域における優位性をワールドワイドで維持すべく、グローバル出願率*は9年連続で約70%、特許許可率も日本で83%、米国で86%(2018年)と、高い割合を維持しています。また、事業に関わる研究開発や産学協同の取り組みをグローバルに展開する中で、世界中のパートナー企業や大学などの研究機関とのコラボレーションによる共同特許出願数は直近2年で20社・10団体、51件におよびます。

開発戦略の要である技術者に対しては、知的財産権への意識を高める教育を継続的に実施しており、累計約4,300名が発明者となっています。また、お客さまや協業先の技術情報など機密性の高い情報を扱う機会も多いため、機密情報管理に関する教育にも注力しています。

*グローバル出願率: 複数国に出願される発明の割合

コンソーシアムとの協業

当社では、国内外のコンソーシアムと協業することで、自社の研究開発力を強化し、さらなる最先端技術の開発に取り組んでいます。日本の3拠点をはじめ、米国、ベルギー、シンガポールなどを拠点として、国内外のデバイスメーカーや国際的な研究機関と協力し、次世代の半導体製造技術に関する研究を進めています。2018年度には、次世代AIのハードウエア開発をおこなう世界的な研究ハブへの参画を開始し、2019年度には、米国フロリダ州の非営利官民パートナーシップであるBRIDG*1と提携するなど、進化のスピードがさらに速まるテクノロジーやアプリケーションの開発から市場投入までの協業の推進に注力しています。

これらのコンソーシアムにおいて、当社は既存デバイスの先端プロセス開発に加え、AIコンピューティングに特化したチップの製造技術などの開発に取り組んでいます。

■AIチップ開発
当社は、米国のパートナー企業と連携して、AIチップ開発に参加しています。AI系の半導体設計を検討するアーキテクチャの段階から、回路や物理的な設計への落とし込み、そして製造から材料開発レベルの研究に至るまで、一貫した開発体制を構築しています。AIの動作に必要なソフトウエアの開発に加え、設計やアーキテクチャに関するパートナー企業の知見を生かし、製造に向けた材料やプロセスおよび装置の開発に取り組んでいます。

■日本における取り組み
エネルギーや労働力問題の社会的要請を受けて、当社は、先進的企業群と東北大学・京都大学・山形大学の理工学と人文社会学を結集したプロジェクトに参画しています。

具体的には、①極限低消費電力のIoT用エッジコンピューティングデバイス、②高効率エネルギー変換ハイブリッド集積パワーデバイス、③労働力の利用効率が高い輸送システムにおける知的エレクトロニクスシステムにおける非競争領域を定義し、革新的技術の創出と人材育成を担う産学共創プラットフォームの構築を目的とする研究活動を展開しています。この研究活動とプロジェクトの幹事機関である東北大学が、競争領域として進めている産学連携拠点事業とのシナジーにより、世界を牽引する新産業創出への貢献を目指します。
 
このプロジェクトの成果として、スピン注入メモリ*2(STT-MRAM)の製造における新たなプロセスや、プロセスインテグレーション技術の開発により、世界で初めてSTT-MRAMの高性能化と高書き換え耐性*3の両立に成功し、STT-MRAMの実用化や応用分野の拡大に寄与しています。

*1 BRIDG: 非営利の官民パートナーシップであるBRIDG は、先進的なシステム統合、マイクロエレクトロニクス製造、さらにはセンサー、光エレクトロニクス、高速トランジスタに向けたIII-V族材料の成膜などを専門としている。生産プロセス技術、R&D、200mm マイクロエレクトロニクス製造を扱う施設を備え、航空宇宙・防衛産業ならびにIoT/AI革命に向けたシステム微細化、デバイス統合、ハードウエアセキュリティ、製品開発などを手掛ける。フロリダ州オセオラ郡、セントラルフロリダ大学、フロリダ・ハイテク・コリドー・カウンシルその他の後援のもと、BRIDGはファウンドリ施設と協業プロセスを提供し、“Bridging the Innovation Development Gap”(イノベーションと開発のギャップを埋めること)をモットーに、課題や機会をソリューションにつなげて商用化を図る活動をおこなっている

*2 スピン注入メモリ: Spin Transfer Torque Random Access Memory。スピントロニクス(固体中の電子が持つ電荷とスピンの両方を工学的に利用、応用する分野)を利用し、トンネル磁気効果(磁気トンネル接合(MTJ)素子において絶縁体を挟んでいる二層の強磁性体の磁化の向きによって電気抵抗が変化する現象)を動作原理とする不揮発性メモリ

*3 高書き換え耐性: データの書き換え回数が無制限となる耐性のこと

技術革新への挑戦

次世代コンピューティングを見据えた研究開発

社会において、さまざまなモノがインターネットにつながるIoTの活用が急速に広がり、データの収集や管理、解析や見える化など、膨大な情報を高速かつ効率的に処理する半導体の需要がさらに高まっています。こうした状況において、開発が進められているのが、人間の神経回路をヒントにしたニューロモーフィック・デバイスです。従来型のアーキテクチャのコンピュータは、情報処理の際にエネルギー消費の面で大きな損失があり、データセンターで使われるコンピュータの消費電力は数十kWにも達します。それに対して、人間の脳はわずか20W程度、また動作周波数*1 においても、現在の半導体デバイスが5GHzに対して、人間の脳は数十Hz程度と言われています。こうした人間の脳の動きを模して研究開発が進められているのがニューロモーフィック・デバイスです。従来のデジタルロジックとメモリのみで役割分担していた処理機能・記憶機能の代わりに、アナログ素子を用いたシナプス結合*2を活用することで、少ない消費電力で高度な情報処理の実現を目指しています。このニューロモーフィック・デバイスにおいては、デジタルにアナログを融合するアプローチが求められ、これまでのように回路の微細化を追求するだけでなく、アナログ抵抗変化素子*3、不揮発性抵抗変化メモリ*4など、人間の神経を模した動きをする機能の開発がおこなわれています。また、演算回路からメモリを呼び出す消費エネルギーに着目し、演算回路とメモリの配置を工夫することで、処理能力のスピード化や省エネルギー化に貢献しています。

当社では、自社の強みである成膜技術やパターニング技術などを生かし、ニューロモーフィック・デバイスやその先にある量子コンピュータ、またロジックとメモリが混在するロジックメモリ融合(コンピュートインメモリ、メモリドリブンコンピュータ)など、次世代コンピューティングの中枢となる半導体に使われる新材料や、それを活用するための革新的な製造プロセスの研究を進めています。

*1 動作周波数: 複数の電子回路が処理の歩調を合わせるために用いる信号が、1秒当たり何回発生するかを示す値。コンピュータの処理性能を示し、高ければ高いほど消費電力も大きくなる
*2 シナプス結合: 学習や記憶に重要な役割をもつとされているニューロン(動物の神経系を構成する細胞)同士の間に形成される接合部
*3 アナログ抵抗変化素子: 抵抗が連続的に変わる機能を備えた電子デバイス素子
*4 不揮発性抵抗変化メモリ: 不揮発な抵抗変化を利用したランダムアクセスメモリ

デジタルトランスフォーメーション(DX*)の推進

AI活用の環境整備が進み、私たちの生活でも身近に感じるようになってきた中、当社はAI活用の場を拡大し、高いレベルでの安定した装置稼動と、開発活動の効率化の実現に継続的に取り組んでいます。半導体製造装置の稼動状態をリアルタイムに把握し、そのデータをAIで解析することで、装置のパフォーマンスの維持やウェーハ加工精度の均一化、テストウェーハの削減、予期せぬダウンタイムの回避など、装置稼動効率の向上や省資源化を目指しています。現在は、2017年に立ち上げたAIの専門部署が中心となり、装置から出力される膨大なデータをAIで解析するためのアルゴリズムの開発などに取り組んでいます。また2018年から最新技術動向の共有や社内連携の強化を目的としたAIワークショップを開催するなど、デジタル技術を活用できる人材の教育を進め、開発活動にとどまらない会社全体のDX を推進しています。

* デジタルトランスフォーメーション DX: Digital transformation。デジタル技術を活用して、社会の変化に対応しつつ製品や会社全体を変革していく活動

進化するディスプレイへの対応

IoT、5G時代の到来により通信端末の高機能化・多様化が進む中、機器に搭載されるディスプレイに対してもさらなる性能向上への要求が高まっています。高画質化に加え、センサー機能搭載やデザイン自由度向上、低消費電力化など、ディスプレイは今後もますます進化し続けます。

とりわけ、スマートフォンやテレビに広く採用されている有機EL(OLED)ディスプレイは、高画質でデザイン性にも優れることから、今後もIT分野や車載など幅広いアプリケーションへの展開が期待されています。

当社では有機ELディスプレイの発光層形成工程に向け、インクジェット描画装置「Elius™」をリリースしています。Eliusは従来の蒸着装置に比べ、製造工程中での材料消費量を大幅に低減でき、中型・大型ディスプレイの製造コスト削減に大きく貢献します。当社ではディスプレイの特性を左右する多様な有機EL材料に対応するため、最先端の知見を迅速に装置技術へ展開できるよう開発をおこなっています。

また、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイの駆動回路を形成するTFTアレイ工程向けには、プラズマエッチング装置「Impressio™」、「Betelex™」、コータ/デベロッパ装置「Exceliner™」を開発・製造・販売しています。Impressio、Betelexでは、エネルギー効率を向上したプラズマ源「PICP™*」を採用し、最大20%の消費電力低減を可能とするとともに、量産におけるプロセス変動を抑制し、高い加工精度を実現します。Excelinerでは、当社独自開発のエア浮上式スリットコータを搭載しており、高スループットおよび優れた塗布均一性・省薬液性能を両立させています。

当社では、今後も生産性・歩留まり向上や環境負荷低減を実現する技術開発を継続し、多様化するディスプレイの発展に貢献していきます。

*PICP™: パネル基板上に極めて均一な高密度プラズマを生成する当社独自開発のプラズマソース

製品の環境貢献

中長期環境目標

当社では環境に関する下記の中長期目標を掲げ、地球環境の保全に努めています。

持続可能な社会に貢献する製品

当社では、バリューチェーンにおける CO2総排出量のうち、製品使用時のCO2排出量が90%を占めています。そのため、環境に配慮した製品設計を推進することが企業活動において重要と考え、製品の省エネルギー化に取り組んでいます。当社は、2019年度に各ビジネスユニット(BU)の代表機種において、「ウェーハ1枚当たりのCO2排出量を2030年度までに30%削減する(2013年度比)」という中期環境目標を設定しました。さらに、この中期環境目標を達成するために、中間目標として「各BUの代表機種でウェーハ1枚当たりのCO2排出量2024年度までに20%削減(2013年度比)」を制定し、具体的な活動を推進しています。2019年度は、この目標達成に向けた主要機種のロードマップ策定や、従来のエネルギーや水に加え、プロセスガスや化学物質の使用量、製品の設置面積・体積・重量、パーツのメンテナンス頻度軽減や長寿命化、さらには装置立ち上げ期間の短縮なども含めたCO2排出量算定のガイドラインを策定しました。このガイドラインに基づき算定した2019年度出荷装置のCO2排出量は、基準装置と比較して16%の削減となりました。また、中長期環境目標の達成に向けて、環境技術戦略の検討も始めました。環境意識のさらなる向上に努め、技術戦略における重要な付加価値として環境技術を継続的に取り入れていきます。今後も中長期環境目標の達成に向けて、さらに活動を推進していきます。

製品環境法規制における取り組み

当社は、製品に関わる各国の環境法規制を遵守するために早期に情報を収集し、適切な対応に取り組んでいます。例えば、EU REACH規則*1への取り組みとして、成形品中の化学物質の含有を適宜調査し、情報提供をおこなっています。これまで調査様式として、JAMP*2が提供するアーティクルインフォメーションシート(AIS)フォーマットを使用していましたが、2020年度より、ppb*3濃度での化学物質規制に対応すべく、業界・国際標準普及を目指したchemSHERPA*4フォーマットを導入します。また、GHS*5規制への取り組みとして、化学品を販売する際には、安全データシート(SDS*6)を提供するとともに化学品の現地調達を進めています。頻繁に改正される環境法規制の説明と対応においては、全従業員を対象とする「製品環境法規制適合講座」を継続的に実施し、お取引先さまに対しては各環境法規制情報を提供しています。今後も各国環境法規制の情報を迅速に把握するとともに、適切な対応に努めていきます。

*1 EU REACH規則: EU Registration, Evaluation, Authorization and restriction of CHemicals。化学物質の登録、評価、認可、制限に関する規則
*2 JAMP: Joint Article Management Promotion-consortium。アーティクルマネジメント推進協議会
*3 ppb: 10 億分の1
*4 chemSHERPA: 製品に含有される化学物質情報をサプライチェーン全体で適正に運用するためのデータ作成支援ツールの名称
*5 GHS: Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals。化学品の分類および表示に関する世界調和システム
*6 SDS:Safety Data Sheet(安全データシート)。事業者が化学物質および化学物質を含んだ製品を他の事業者に譲渡・提供する際に交付する化学物質の危険有害性情報を記載した文書のこと

その他のマテリアリティ