生産性向上

東京エレクトロンでは、統合基幹業務システムの展開とともに各部門における業務システムの統合やデータベースの一元化などにより、業務の標準化や自動化を推進し、バリューチェーン全体における生産性のさらなる向上に取り組んでいます。また、品質マネジメントの重要性を認識し、品質優先のオペレーションを実践することで、経営効率のさらなる向上に努めています。さまざまな教育プログラムを展開することで従業員一人ひとりの生産性に関する意識と能力を高めるとともに、お取引先さまとも協働でサプライチェーン全体における継続的な品質改善活動を実施しています。生産性の向上を継続的に追求し、企業価値を高めることに努めていきます。

生産性向上の推進

業務効率化

当社では現在、生産性と品質のさらなる向上を目指した新基幹システム(ERP*¹)の導入を進めています。業務や国の垣根を越えて統合される新基幹システムは、①新収益認識基準対応、②変化に迅速に対応した事業判断・経営判断、③大幅な業務効率の改善、④デジタルトランスフォーメーション*²を見据えたグローバル統合情報の活用、⑤究極の働き方改革の実現、の5つの新たな価値の創出を目的としています。業務の効率化をはじめ、コロナ禍における在宅勤務拡大や承認業務のオンライン化・デジタル化が進む中、それらの課題解決にも寄与しています。

2020年度は本社、国内製造拠点および海外現地法人、さらにパートナー企業さまも含めて導入に向けたコミュニケーションの活性化と意思統一が進み、業務改革へのグローバルな「One team」を結成することができました。2021年5 月には、本社を中心に新基幹システムが稼動し、この導入の過程で得られた知見を最大限に活用しながら、プロジェクトメンバーを含む全従業員が一丸となって真のグローバル統合システムを実現していきます。

*1 ERP: Enterprise Resource Planning。企業の「会計業務」「人事業務」「生産業務」「物流業務」「販売業務」などの基幹となる業務を統合し、効率化、情報の一元化を図るためのシステム
*2 デジタルトランスフォーメーション: サステナビリティレポートP.19 参照

生産性向上の取り組み

当社は半導体およびフラットパネルディスプレイ製造装置のメーカーとして、バリューチェーン全体のオペレーションにおいて安全・品質を重視しながら、生産性の継続的な向上に取り組んでいます。

具体的には「Safety First*¹」のスローガンのもと、事業に関わるすべての人々の安全と労働環境の改善に努め、お客さまの真のニーズを理解し世界No.1の品質を目指して、品質マネジメント体制の構築とバリューチェーンにおける品質向上を追求しています。また安全・環境法規制の準拠、ソフトウエア開発の効率化やスマート化などの活動を全社でおこなっています。製造オペレーションにおいては、BOM*²生産やリピートオーダーのモジュール出荷*³、フローラインの構築*⁴などの取り組みを展開しています。

また、お客さまのご要望や市場変動にも迅速に対応するため、生産に関わるすべての情報を一元化した生産システムの構築や、製造実行システム(MES*⁵)の導入により、IT基盤の整備と現場データの情報化を実現しています。
これらのシステムで集約したさまざまなデータを各業務において活用することで、生産計画の適正化や効率化、パーツ納期の見える化、また販売計画と生産・調達・在庫計画の連携強化などにより、業務の生産性向上を総合的に推進しています。

当社の製造・物流業務においては、多品種にわたる部品を取り扱うため、自動倉庫の設置や入庫ナビシステムの導入、および検査の自動化を推進することにより、省人化や効率化にも取り組んでいます。

*1 Safety First: 事業に関わるすべての人々の安全を第一に考えた当社スローガン
*2 BOM: Bill Of Materials。部品表。製品をつかさどる部品の一覧であり、階層構造を示すとともに、製品がどの部品で組み上がっているか、それぞれの部品の基本情報を含む
*3 モジュール出荷: 装置をモジュール単位でお客さまに出荷し、お客さまの現場においてモジュールを装置に組み立て検査・調整を実施する。製造から出荷までのリードタイムの削減の実現につながる
*4 フローラインの構築: 材料、人員などを確保し、期待した日程で作業を進めるよう正確かつ効率的におこなえる体制を構築すること
*5 MES: Manufacturing Execution System。製造工程の把握や管理、作業者への指示や支援などをおこなうシステムのこと

ソフトウエア開発の取り組み

製品開発の効率化と付加価値の向上
当社では1995年より、自社で開発した基盤ソフトウエアを半導体製造装置に搭載し、業務の効率化や品質の向上に取り組んでいます。基盤ソフトウエアを共通化することで、装置ごとに重複した各種機能の開発工数削減が可能となり、制御のリアルタイム性*¹の保証、および新しい要求や技術への対応強化につなげています。さらに、オブジェクト指向*²のコンセプトなどを取り込み、次世代装置に向けて新しい基盤ソフトウエアのより効率的な開発を進めています。

2020年度は、当社が推進するデジタルトランスフォーメーション活動の新たな本拠地として「TEL デジタル デザイン スクエア」を開設し、ソフトウエア開発を通じて当社が提供する製品における付加価値のさらなる向上を目指しています。

スマート装置の実現
IoT やAIなどの革新的な技術を用いたものづくりが展開される中、お客さまにおいては可視化されたデータの活用による生産性の向上や、品質の安定性を高めるスマート工場*³の構築が進んでいます。このような状況において、当社ではお客さまの装置から生成される各種データをもとに、高度な装置運用サービスを提供するとともに、装置の付加価値をさらに向上させる「装置データマネジメント」を進めていきます。

*1 リアルタイム性: 作業を完了するまでの時間に制約がある性質のこと
*2 オブジェクト指向: ソフトウエア工学理論の一つ
*3 スマート工場: デジタルデータ活用により継続的かつ発展的に業務プロセスの改革、品質・生産性の向上を実現する工場
*4 OES: Order Entry System

バリューチェーンにおける生産性の向上

品質についての考え方

当社では、品質についての考え方を以下のように定義しています。

「東京エレクトロングループは、提供する製品およびサービスが高い品質であることを目指します。それは開発に始まり製造・据付・保守すべての工程を含み、また営業活動の顧客対応業務も品質とみなします。わたしたちは、お客さまの成功を支える高品質の製品とサービスおよび革新的なソリューションを提供し続けます。」

品質方針


1.「 品質優先」
  品質の安定は顧客満足のみならず、期待通りの生産計画を達成し、メンテナンス負荷を低減する基盤であり、
 一時的なコスト増よりも優先します。

2.フロントローディングと自工程保証
 最先端の技術に基づき開発設計段階から品質をつくり込み、すべての業務プロセスにおいて、自らの工程 品質を完結する
 ことで、高品質の製品を提供し続けます。

3.品質と信頼
 品質に問題が生じた場合には、製造・販売・サービス部門が一丸となって、事実に基づき本質的な原因究明 に全力で
 取り組み、速やかな解決に努めます。

4.継続的改善活動
 お客さまの満足・信頼につながる活動に対して、品質目標や指標を設定し、PDCA サイクルを回しながら、
 継続的改善を実施していきます。

5.ステークホルダーとのコミュニケーション
 製品品質に関わる必要な情報をタイムリーに発信するとともに、ステークホルダーの期待に適切に対応していきます。


当社では、開発段階からの厳密なリスクマネジメントと開発・設計審査や、シミュレーションによる顧客運用の検証を徹底することで自工程保証に努めています。また、情報環境を強化する施策の一つである重要部品のトレーサビリティシステムの構築にも取り組んでいます。過去のトラブルや、製造組み立て時の調整値、さらにはお取引先さまからの重要部品の検査情報などをOne Platform*¹で参照できるようにすることで、リスクマネジメント(FMEA*²)の強化を実現し、各種不適合事案の未然防止につなげています。この自工程保証と未然防止を徹底することにより、従業員がより付加価値の高い業務に注力する時間を創出することが可能となり、Shift Left*³(フロントローディング)の取り組みを推進することにつながると考えています。今後も、お客さまへ高品質、かつ付加価値の高い製品とサービスを提供することに努めていきます。


*1 One Platform: トレーサビリティを効果的、かつ効率的に実現できるように複数の異なるシステムをシームレスな情報源として容易に参照できるようにすること。サステナビリティレポートP.28 業務効率化を参照
*2 FMEA: Failure Mode and Effects Analysis。故障モード影響解析。リスクを予め把握し、予防・軽減していく手法
*3 Shi Le : サステナビリティレポートP.17 参照

マネジメント体制

当社では、高品質で安定した製品を提供するため、代表取締役社長を責任者とした品質保証体制を構築しています。品質マネジメントシステム規格であるISO 9001認証取得を推進し、当社グループすべての製造会社においてISO 9001: 2015への移行を完了しています。

ISO 9001認証取得状況

会社名事業所名取得年月


東京エレクトロン テクノロジーソリューションズ

藤井事業所/穂坂事業所1994年9月
東北事業所

1994年12月

東京エレクトロン九州合志事業所1997年3月

TEL Magnetic Solutions

-2009年11月
東京エレクトロン宮城大和事業所2012年9月
Tokyo Electron KoreaBalan Plant2011年9月
TEL Manufacturing and Engineering of AmericaChaska Office2013年3月

Tokyo Electron (Kunshan)

-2018年5月

取り組み事例
当社では統計的手法を使った工程改善活動(PCS*)に注力しています。お客さまの製造現場においては常に、装置間における品質のばらつきの抑制や正確なプロセスの再現性、また高い生産性が求められています。これらのご要望に応えるべく、特定の重要部品を扱うお取引先さまに対してPCS の重要性についてご理解とご協力をお願いしています。お取引先さまとともに各種重要部品から取得した情報を管理図化し、傾向分析することで、製造工程における変化の速やかな検知と対応をおこなっています。このお取引先さまとの活動ならびに、当社の製造工程におけるPCS 活動の継続的な実践が、部品品質のばらつきの抑制や良品製作工程の維持と改善につながり、最終的にはお客さまの期待を上回る製品の提供に寄与しています。また、日々新しい技術が生み出され、お客さまのニーズが高まる中で、新たな重要部品を扱う製作工程については、常に見直しや改善が必要となります。当社の装置は数万にものぼる部品で構成されていますが、その中から特にお客さまの生産において関連性の高い重要な部品を選択し、それらを定期的に集計して分析をおこなう作業は、多くの工数を必要とします。当社では、この作業の適正化と効率化を図るため、お客さまからの情報収集や国内製造拠点間での協議、またお取引先さまからのヒアリングなどを実施することにより、自動化も含めた業務のフローの見直しやシステムの改善などを進めています。Shift Leftの考えを生かしたこれらの活動を継続的に実施することで、さらなる生産性の向上に取り組んでいます。

* PCS: Process Control System

自工程保証の徹底とShift Left の推進

製品の品質向上のためには、上流工程で不適合を生じさせないようにするとともに、各工程における品質管理を徹底し、不適合品を後工程に流さないようにすることが重要です。この観点から、当社では自工程保証に重点を置いた活動を推進しています。特に、製品設計の初期段階からのリスク抽出と対策(FMEA)を確実に実施し、各工程における徹底した審査や、シミュレーションを使用した検証などをおこなうことにより、製品品質の完成度向上を目指しています。

この自工程保証活動において、各工程の精度を向上させ、手戻りによる対応コストの低減に取り組むことで、上流工程において付加価値の高い技術と製品を生み出すことを可能にし、Shift Leftの推進にもつながっています。さらに当社では、Product Lifecycle Management(PLM)の推進をおこない、自工程保証で徹底管理された製品企画から開発、設計、製造、サービスまでの全工程を包括的に管理し分析することで、製品の早期リリースや業務の効率化、また品質向上やコスト削減の実現に努めています。


再発防止・未然予防のための対応

当社では各製品に適した独自の設計ルールを定め、ISOやEN*といった安全規格への適合とともに、より高いレベルの安全性を追求しています。装置メーカーとしての安全に配慮した製品づくりの体制や、装置の設計・製造上の不適合、また作業中に発生した事故などに対応する体制を整えています。事故発生時は、事故報告システム「TIRS*²」によって、各事業部の安全や品質の関係者、および責任者ならびにトップマネジメントを含めた経営層に情報が配信され、直ちに事故調査をおこなった上で原因の特定と再発防止策の立案をします。

装置の重要不適合や品質の情報については、当社運用規程に準じて独自システム「QA-BOX*³」を運用し、品質部門全体で共有します。事故調査の結果から得られる対策を、問題が発生した装置のみならず、該当する他のお客さまの装置にも速やかに反映し、併せて現行の設計基準の改訂もおこないます。また、人的ミスを誘発する要因の分析や、より分かりやすい手順書の作成などにより、事故の再発防止に努めています。

この「QA-BOX」の運用では、各装置を担当する品質部門長が参加する定例会において事故の共通性を検証し、課題とその対策を共有することで、当社の全装置における類似不適合の未然予防に向けたさまざまなアプローチを検討しています。さらに、QA-BOX上で共有された案件の進捗管理や施策効果の検証により、有効な施策の実行を徹底し、装置に起因する事故数の低減につなげています。

tirs_2021_.png

*1 EN: European Norm。EC指令(ニューアプローチ指令)には明記されていない技術基準の部分を補完すべく制定されたEUの統一規格
*2 TIRS: TEL Incident Report System
*3 QA-BOX: 当社内の重要品質情報の共有・横展開ツール

*4 Q-VICS: Quality Valuable Information Chain System
*5 FCN: Field Change Notice。一般的なリコールを指す

お取引先さまとの取り組み

品質の高い製品を迅速に市場へ提供するためには、お取引先さまとの強いパートナーシップに基づく継続的な品質の向上が欠かせません。当社では、2000年度より独自のアセスメントシステム「Supplier Total Quality Assessment(STQA)」を実施し、当社が目指す品質についてお取引先さまに十分にご理解いただけるよう努めています。お取引先さまと新規の取引を開始する際においてもSTQAを使用し、製品品質やコスト、情報セキュリティ体制、また企業の社会的責任分野における人権、倫理、安全、環境などの取り組みについて、セルフアセスメント形式でチェックをおこないます。リスクが確認された場合には、お取引先さまを訪問し、現場で不適合箇所を確認しています。お取引先さまに当社の品質についての考え方を共有させていただいた上で、改善策の立案と実行をお願いするとともに、それらすべてが完了するまで継続的なサポートを提供しています。なお、重要部品を扱うお取引先さまや品質に関する問題が確認されたお取引先さまにおいては、3年ごとに監査を実施しています。また、当社の共通システムであるSTQAを国内各製造拠点で運用しているリーダーと定期的に会議を開催することで、お取引先さまに関する情報の共有や課題の解決に向けた検討をおこなっています。

また、東京エレクトロン九州では、お取引先さまと独自の改善活動に取り組んでいます。重点的に評価をおこなうと判断されたお取引先さまに対しては、再発予防のために過去に発生した不適合の事例をもとに、STQAに技術視点のチェック項目を追加し、アセスメントを実施しています。このような活動を継続することで、技術視点を強化した予防策の有効性を高め、品質のさらなる向上につなげています。

取り組み事例  
東京エレクトロン テクノロジーソリューションズの品質保証部門では、お客さまのもとで発生する部品やユニット品の不具合対策費用の削減を重要課題に挙げ、2020年3月より「一点集中型」の品質改善活動を進めてきました。この活動により、すべてのビジネスユニット(BU)の発生不具合を原因別に分類したところ、社内評価の不足が31%、お取引先さまに関係する不具合が15%を占めることが分かりました。また、新しい技術を採用した装置やフラットパネルディスプレイなどの大型装置では、社内評価の不足の割合が高く、それ以外の装置はお取引先さまに関係する不具合の割合が高くなる傾向が見られました。

各BUでは、現状分析に基づき、注力すべき品質の改善項目を一点ずつ出し合い、あるべき姿を検討しながら対策を進めています。例えば、DSP* Dept.(ES BU)、FPD BUでは、新規装置の企画の段階から、お取引先さまと技術・品質保証部門が協力し、FMEAにより具体的評価内容を抽出することでお客さまの使用環境を考慮した評価を実施しています。また、TFF BU、TS BUでは、不具合発生頻度の高い部品やユニット品における不具合の発生ゼロを目指して活動を展開し、徐々に成果が見られています。ES BU、CT BUでも先行する他のBUの分析結果をもとに、独自の「一点集中型」の品質改善活動が展開されています。今後もお取引先さまとともに「一点集中型」を含めた取り組みを継続的に全社で展開することで、部品やユニット品のさらなる品質向上を目指していきます。

* DSP: Dry Surface Preparation

その他マテリアリティ