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宇宙で最も冷たいスポットを創り出す

2018.8.21

ISSで行われる、超低温実験の装置。レーザーを使って、ガスを絶対温度近くまで冷却する。
Image by NASA
ISSで行われる、超低温実験の装置。レーザーを使って、ガスを絶対温度近くまで冷却する。

真空の宇宙空間は非常に冷たく、絶対温度で2.7ケルビン(-270.45°C)という超低温だ。ただし、意外かもしれないが、物理的な温度の下限である絶対零度(−273.15 ℃)ではない。
国際宇宙ステーション(ISS)では、現在NASAのCold Atom Laboratory(CAL)によって、宇宙で最も冷たいスポットを創り出す実験が進められている。
2003年、MITの研究者は、ナトリウムガスをレーザーで冷却することで、500ピコケルビン(1ピコは1兆分の1を表す)を達成した。CALがISSで行う実験では、これをさらに下回る、100ピコケルビンになる。
なぜ、これほどの低温環境を創り出す必要があるのか。
それは、ボース=アインシュタイン凝縮という現象の検証のためだ。1925年に、アルバート・アインシュタインは、インドの物理学者サティエンドラ・ボースの手紙をきっかけに、超低温では気体原子集団が凝縮して一つの大きな波として振る舞うと予見。1995年に、アメリカの研究者、ワイマンとコーネルによってボース=アインシュタイン凝縮が起こることが実証された。ボース=アインシュタイン凝縮は、電気抵抗がゼロになる超伝導にも関わっていると考えられている。
しかし、地球上では重力の影響があって、ボース=アインシュタイン凝縮が持続する時間は1秒にも満たない。一方、重力の影響が少ないISSでは、10秒程度まで観測時間が延ばせると期待されている。これまでCALには、ボース=アインシュタイン凝縮を用いた7つの物理実験が提案されており、ISSではこれらの実験が実施されることになる。
宇宙で最も冷たいスポットで行われる実験で、熱い注目を集める結果が出ることを期待したい。

(文/山路達也)

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