No.018 特集:スマートコミュニティと支える技術

No.018

特集:スマートコミュニティと支える技術

連載01

半導体チップの再生可能エネルギーへの応用

Series Report

第3回
電力系統にも半導体チップ

2018.10.31

文/津田建二

電力系統にも半導体チップ

再生可能エネルギーを作り出し、しかもできるだけ安定に停電しないように供給することが求められている。そのためには、大量の電力を消費する地域には多くの電力を送り、少量の電力しか使わない地域には少しの電力だけを送らなければならない。電力の理想は、発電量と消費量のバランスが常にとれていることである。そして、そのバランスをとるためには、小規模の発電施設を地域内に作って連結し、分散型電源を利用することで安定的に電力を供給する仕組み「マイクログリッド」が適している。また、送電線では交流電圧50万ボルトや22万ボルトなどの非常に高い交流電圧で電力が送られるが、地域ごとに電力を調整するマイクログリッドは電圧や交流の位相がずれないように制御もするのだ。

2016年7月、九州電力は、太陽光発電など再生可能エネルギーの導入を制限すると発表した。太陽光発電設備量は、平成27年5月末の約500万kWから1年間で約110万kW増加し、平成28年5月末で615万kWとなっている。太陽光発電は昼間しか発電しないが、電力需要は昼間が最も大きいため、需要に沿っていると思われていた。ところが、九州電力は、昼間は供給が需要を上回っているとし(参考資料1) 、太陽光発電を制限すると発表したのだ。

九州電力はなぜ再生可能エネルギーの出力を制限するのか。それは、太陽光発電はあまりにも変動が大きいからで、今のシステムでは制御しきれないからだ。例えば、家庭用の発電能力3kWの太陽光システムで調べた例がある(参考資料2)。快晴の日は1日に発電する電力が15kWhとなるものの、曇りの日は40〜60%に落ちるため7kWhまで減少する。そして雨の日には10〜20%しか発電しないため2kWhに落ちてしまう。

つまり、図1に見られるように、昼間のオフィスなどで電力を多く使う時間帯には太陽光発電を使えるが、19~20時のゴールデンタイム、つまりエアコンやテレビ、電灯など家庭での電気量が増える時間帯には、太陽光発電は使えない。このため、火力や揚水発電(海や湖の水を真夜中の需要が少ないときの電力で汲み上げ、19~20時頃の急な電力使用のために水を流して電力を起こす)などで電力を増やす必要がある。

[図1] 昼間しか発電しない太陽光は日中の需要だけに応える
出典:九州電力 http://www.kyuden.co.jp/var/rev0/0055/4201/2ntja6f6cpd.pdf
風力発電を制御する3つの方法

昼であっても、曇ってきたり雨が降ると太陽光による発電能力が大きく落ちる。すると、火力や揚水発電などを急に回さなければならなくなるのだ。電力は常に需給バランスがとれていなければならない。しかも、発電するなら、その電力分を消費する必要がある。これは、大量の電力を蓄えておくことがコスト的に難しいからだ。その点、原子力は、常に一定の電力を供給でき、変動が全くない。ただ、それ以上に、大事故が起きると人間の力では暴走を止められないという危険な電源でもある。

九州電力は、これまで需給バランスの変動を火力と揚水動力*1を使って調整してきた、とニュースリリースの中で述べている。しかし、太陽光発電所の設置は急増しており、減る気配はない。もし太陽光発電の割合が少なければ、たとえ天気による変動があっても、全体への影響はほとんどなかった。しかし、太陽光の割合が増えれば増えるほど、電力供給は天気の影響をまともに受けてしまうようになる。それゆえに、九州電力は太陽光発電の制限を行うことにしたのだろう。

[ 脚注 ]

*1
揚水動力: 需要の少ない夜間に水をくみ上げて需要の多い昼間に汲み上げた水を動力として使うこと
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