No.023 特集:テクノロジーで創る、誰も置き去りにしない持続可能な社会

No.023

特集:テクノロジーで創る、誰も置き去りにしない持続可能な社会

Expert Interviewエキスパートインタビュー

ドローンによる無人配送システムの構築で住みたい場所に住める社会へ

2020.07.01

小野 正人
(株式会社かもめや 代表取締役)

ドローンによる無人配送システムの構築で住みたい場所に住める社会へ

日本は、世界の中でも便利な国の1つだ。街中には24時間営業のお店があり、急に何かが必要になったときでも、困ることがあまりなくなった。また、通販の発展などもあり、生活はますます便利になっている。ただし、このような生活ができるのは都市部が中心。離島や山奥の過疎地帯は、日用品や医療品を手に入れるのにも不自由している。小型無人輸送機(ドローン)を用いて、このような問題を解決しようと取り組んでいるのが、香川県高松市に拠点を置くかもめや。かもめやの代表取締役であり、エンジニアでもある小野正人さんに話を伺った。

(インタビュー・文/荒舩 良孝 撮影/川合穂波〈アマナ〉写真提供/株式会社かもめや)

憧れていた離島での暮らし

小野 正人氏

── 小野さんが、かもめやで取り組んでいることを教えてください。

ひと言で言うと、離島や山間部などの過疎地でも、24時間、365日、いつでも必要なものが届く世界の実現です。私は香川県高松市の男木島(おぎじま)に住んでいたことがあります。この島はフェリーに乗れば、高松港まで40分程度で行くことができるのですが、1日に6便だけしかありません。フェリーは夕方6時以降の便がないので、夜間は四国本島との交通手段がなくなってしまいます。例えば、急に何かが必要になっても、すぐに買いに行けないという不便な状況が発生します。このような状況をなくすために、ドローンを使った物資輸送システムを構築しようとしているのです。

── いつ頃から、離島に興味をもつようになったのですか。

私はもともと香川県出身で、子どもの頃から学校や地域の行事で離島に行くことがよくあり、離島に馴染みがありました。その延長のような感覚で、瀬戸内以外の離島にも興味を持ち、仕事のかたわら離島や僻地巡りをするようになりました。離島を訪問するうちに、島に関わる仕事をしたいと思うようになって、第1回目の瀬戸内国際芸術祭が開催されるときに、ボランティアとして参加しました。このときは、週末だけの参加だったのですが、第2回目の準備が始まった2010年から芸術祭を支えるボランティアサポーター「こえび隊」の事務局を務めるNPO法人に転職しました。そして、第2回の芸術祭が終わった2013年12月に、かねてからお付きあいのあった男木島の方から「家が空いたから、借りる?」と声をかけて頂きました。離島で家を借りるのはとても難しいことです。私は、嬉しくて、すぐに借りることを決め、2014年1月から男木島で暮らす準備をし始めたのです。

── このとき、男木島で事業を興す構想はあったのでしょうか。

まったくありませんでした。こえび隊の事務局をする前は、エンジニアとして、仕事を転々としていた時期もありましたし、とりあえず1年くらいは男木島でのんびりと好きなことをやろうかなと思っていました。仕事については、あまり心配していませんでしたね。島の仕事もありましたし、インターネット経由でわりと単価のいいエンジニアの仕事もありましたから。男木島で暮らしているうちに、島の交流スペースをつくりたくなって、かもめやを創業しました。このときのかもめやの事業は、当然のことながら、ドローンとは無関係のものです。

男木島
瀬戸内海中部の備讃瀬戸に位置し、面積は1.34 ㎡。2019年の人口は109世帯168人。行政上は香川県高松市男木町に属する。
男木島

離島で暮らしてみてわかった問題点

── ドローンの配送事業を考えるようになったのは、いつ頃からですか。

男木島で生活をして目の当たりにしたのが、時間の経過と共に住民の方が少しずつ減っていく現実でした。当時、男木島には170〜180人ほど住んでいたのですが、私が住んでいた1年間だけでも、数人の方が家を閉めて島を出ていったのです。どうしたのだろうと話を聞いてみると、一番の理由は健康問題でした。体が動かなくなったり、病院に通院しないといけなくなったりして、島での暮らしを維持するのが難しくなってしまったのです。

私は島に住みたいと思って移住してきたのですが、その一方で、島に住み続けたくても出ていかないといけない人もいる現実を目にして、これはおそらく男木島だけの問題ではないだろうと感じました。調べてみると、男木島よりもっとひどい状況の場所もあることがわかりました。今、日本は少子高齢化が進み、過疎地人口が1200万人にもなります。日常の買い物にも不自由している買い物弱者が850万人もいます。私が暮らしていた離島は、買い物弱者の課題先進エリアだったわけです。同時に、日用品の買い物などの他にも、通院や医療品の受け取りにも困っている人が多いこともわかっていました。このように、男木島で暮らすうちに、徐々に物資の配送問題を何とかしないといけないという想いが強くなっていきました。

── 事業化に踏み切るにあたって、大きなきっかけはなかったのですか。

自分の中で大きな転機となったのは、2014年に、世界最大級のインターネット通販企業が、ドローンを飛ばして無人配送を計画しているというニュースを見たときでした。このドローンを使えば、過疎地の物資輸送問題を解決できるのではないかと直感しました。

実際に調べてみると、離島に運ばれる荷物の9割以上が10kg以下の比較的軽いものでした。これらはどれも航空用のドローンで運べるものばかりです。離島への物資輸送は、定期船などが利用されています。定期船の運営は自治体によってされている場合が多いのですが、人材不足などでその維持が難しくなっています。そのため、海上タクシーや漁船などによるデマンド運行もされていますが、往復で4万〜10万円ほどの高額な費用がかかります。たくさんの費用とエネルギーをかけて運んでいますが、現時点ではとても効率が悪いのです。ドローンを使えば、効率よく離島などの過疎地に荷物を運ぶことができるのではないかと思いました。

小野氏へのインタビューは、2020年6月8日にリモートで行われた。
小野氏へのインタビューは、2020年6月8日にリモートで行われた。
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