No.016 特集:宇宙ビジネス百花繚乱

No.016

特集:宇宙ビジネス百花繚乱

連載01

デジタル時代で世の中はどう変わるのか

Series Report

第1回
デジタル化とは何か

2017.12.28

文/津田 建二

デジタル化とは何か

最近、デジタル化、デジタル変革という言葉がモノづくり企業やIT企業からドッとあふれ出てきた。同じ概念でも異なる言葉で表現することも多い。言葉の整理が必要だろう。時にはITと無縁な企業がデジタル化を叫び、総合電機メーカーと言われたエレクトロニクス企業や半導体企業は戸惑いを見せている。デジタル化の波とは何を意味するのか。これからのエレクトロニクス企業はどうなるのか。半導体や半導体製造装置企業はどうなるのか。連載第1回目の今回は、デジタル化の意味を整理し、世に与える衝撃について考察してみる。そして、連載第2回ではデジタル化で何が変わるのか解説し、第3回ではデジタル化で登場する全く新しいビジネスについて考察していく。

最近、モノづくり系の取材やセミナー講演を聞いていると、デジタル化やデジタルトランスフォーメーション(転換)というような言葉があちらこちらから聞こえてくる。時にはデジタルツイン、サイバーフィジカルシステム、などの言葉も登場する。これらの言葉は、長くエレクトロニクス技術に携わってきた者たちには異質な言葉に聞こえ、これまでエレクトロニクス技術とは無縁だった人たちには新鮮な言葉に聞こえる。ここでは、言葉の意味をもっと明らかにして整理する。

一昔前はeコマース、電子商取引など

まず、これらの言葉の使われ方が少しずつ変わってきていることにも注意する必要がある。例えば、インターネットを使って決算するビジネスを、かつては「電子商取引」あるいは「eコマース」と言った。当時はデジタルという言葉はあまり使われず、「電子○○」「e○○」という呼び方が主流だったのだ。その根底にあるものは、「電子」や「e」が表すエレクトロニクス(Electronics)技術であった。エレクトロニクス技術のベースは、半導体集積回路(IC)技術である。eコマースで実際に使っているのは、インターネットのブラウザであり、銀行口座の登録情報にすぎない。「電子」と言いながら電子を元にする「エレクトロニクス技術」を使っている訳ではなかった。

インターネットのブラウザを表示する、パソコンやスマートフォンの基本技術となっているハードウエアがエレクトロニクス技術なので、「電子○○」「e○○」と言いつつも、「電子」は間接的に使われていただけであった。

しかし最近は電子という言葉は聞かれなくなり、デジタル化やデジタル変換という言葉が使われるようになってきた。これらの言葉も「電子」と同様に、これまでエレクトロニクス技術が使われていなかった分野をエレクトロニクス化することを意味している。実際、エレクトロニクス技術――センサや、アナログ回路、デジタル回路、CPU、メモリなど――を使えば、システムを自動化したり、自律的に動作させたりすることができる。つまり、これまでエレクトロニクス技術と無縁だった分野で、その技術を使って社会を変えることを、デジタル化あるいはデジタル変換(トランスフォーメンション)と呼んでいるのである。

裏返せば、エレクトロニクス技術とそれを支える半導体IC技術が、社会やインフラ、建設、鉱業、金融、さらには農業やホワイトカラーのオフィス作業、ビル管理など、人間が関わるあらゆる仕事の分野に及んできたことを意味している。

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