Expert Interviewエキスパートインタビュー
金融サービスにおけるインクルージョンを実現する、国際送金サービス
2020.08.21
WorldRemit(ワールドレミット)は、東アフリカ出身のイスマル・アーメッド(写真左端)がロンドンでの留学生時代(1980年代)に体験した、国際送金の煩雑さを解決しようと2010年に共同創設した。かつての国際送金は時間ばかりかかるうえ、料金も高く、貴重なお金が失われていたものだったが、現在ワールドレミットは、先進国での出稼ぎ労働者が母国へ送金する手段として多用されており、コンピュータやスマートフォンから母国の家族のデジタル・ウォレットへ直接入金するような手軽さが人気を集めている。400万人の利用者を抱え、6500通りの方法で送金元国と送金先国を結び、世界150か国 で90種類の通貨によるお金の受け取りを可能にするデジタルな送金によって、金融サービスにおけるインクルージョン(多様な人々へのサービス提供)を実現する。アジア・太平洋地域の責任者に聞いた。
送金は、50か国から150か国へ
── ワールドレミットは、海外で働く人々が発展途上国の故郷の家族へ送金するのに広く使われています。どんな仕組みになっているのか、教えて下さい。
ワールドレミットは、コンピュータ上のウェブ・プラットフォームやスマートフォンのアプリを利用して、50か国の送金元から150か国の送金先へお金を送れる仕組みです。送金元は100%デジタルになっていてキャッシュ(現金)は使えませんが、支払いにはクレジットカードや銀行振込など様々な方法が可能です。
送金時に受取人がどの方法で受領できるのかを指定でき、こちらも銀行振込、デジタルウォレットへの入金、キャッシュを取りに行くなど多様な方法が選べます。また料金関連の支払いも可能で、家族のために携帯電話の通話時間を補充したり、電気代などを支払ったりすることもできるようになっています。もちろんすべてが、居ながらにして24時間いつでも、携帯電話の画面を数回タップするだけで済ませられます。
── その仕組みの背後には、複数の支払いネットワークとの提携があるのでしょうか。
3つの部分に分けて説明しましょう。我々のテクノロジーとネットワークは、ユーザーの送金と受領が安全で便利で間違いなく行われることを第一としています。フロントエンドでは、モバイル・ファースト戦略を採っており、実際送金の70%は携帯電話経由で行われています。テクノロジーと製品チームが注力しているのは、送金の手続きができるだけ少ないステップで済まされ、その都度必要な情報がスクリーンに明快に表示されることです。
バックエンドのシステムは完全にクラウドベースになっており、ここでは一流のサードパーティーのベンダーと独自開発ソフトを利用して、安全に処理が進むようにしています。このビジネスにおいては、コンプライアンスと信頼が何よりも重要です。そのため、過去10年にわたる取引の履歴データを利用して機械学習を行い、不正を発見する先進的なモデルも作っています。不審なやり取りをすぐに見つけつつ、正当なユーザーの使い勝手には何ら影響を及ぼさないようにするのです。
フロントエンド、バックエンドに加えて、さらに3つ目の部分として送金ネットワークがあります。これは、国際的、あるいは国内での提携と、ワールドレミットが運営する法域での一連のライセンスなどの組み合わせによって成り立っています。世界中のユーザーが利用できるのは、このネットワークが非常に幅広いからに他ありません。
── 送金元が50か国である一方で、送金先は150か国というのはアンバランスにも見えますが、規制上の制限などがあるのでしょうか。
それには2つの理由があります。一つは、単純にユーザーの需要です。世界の送金の流れを見ると、大きくお金の輸出国と輸入国に分かれます。どこでサービスを提供するかは、その需要によって定めているわけです。
もう一つの理由は規制です。国によっては送金を認めていなかったり、そもそもデジタルによるビジネス・モデルに慣れていなかったりするところもある。あるいは、ライセンスを得るためのプロセスが非常に難しいため、現時点では諦めているというケースもあります。
── ビットコイン技術は使われていますか。
同様の送金サービスで利用しているところは見られますが、我々は現在のところビットコインは使っていません。
── これまで行われた送金数はどれくらいですか。また平均の送金額はいくらでしょうか。
残念ながら、それらの数字は公開していません。ただ言えるのは、送金額には大きな幅があるということです。