- 山﨑 敦義
- TBM 代表取締役 CEO
- 平本 督太郎
- 金沢工業大学 SDGs推進センター長
- BoPグローバルネットワークジャパン 代表理事
PRESENTED BY
クロストーク ”テクノロジーの未来を紐解く
前編:SDGsビジネスはスタートアップ向き
地球温暖化や自然破壊、貧困、資源の枯渇など…。全世界が一丸となって解決に取り組むべき問題が山積している。こうした問題の解決なくして、人類や地球に未来はない。そして、問題解決に向けて国連がまとめた取り組み目標が「SDGs(持続可能な開発目標)」である。だが、問題が大きすぎて、多くの人はSDGsを他人事のように考えてはいないだろうか。実は、SDGsは、新たなテクノロジーの開発を後押しし、新ビジネスを生み出すテーマの宝庫でもあるのだ。画期的な新素材を基にしたビジネスをSDGsの理念に沿って展開するスタートアップ企業、TBM 代表取締役 CEOの山﨑敦義氏と、経営学者の立場からSDGsに関連した新ビジネスの創出を研究している金沢工業大学SDGs推進センター長の平本督太郎氏が、SDGsの目標達成への、テクノロジーを活用し、新ビジネスを創出することによる貢献について議論を交わした。
山﨑 ── 私たちは、安価で世界中に豊富に存在する資源である石灰石を主原料にして、紙やプラスチックの代替素材を作るビジネスをしています。
紙を作るためには木材が、プラスチックを作るためには石油が、原料として必要です。つまり、どこの国でも自給できるものではありません。さらに、紙は水資源が豊富でないと原料を輸入しても作ることができません。
私たちが手がけている「LIMEX(ライメックス)*2」という代替素材は、どこにでもある資源を使い、どんな場所でも、紙やプラスチックに代わって、生活や産業を支えるモノを作ることができます。これによって、それぞれの国が保有する資源の量や種類の差によって生まれる経済基盤の格差を埋め、発展途上国が飛躍するきっかけを生み出せると考えています。また、主原料が石灰石であるLIMEXは経年変化に強く、高効率なリサイクルが可能なので、環境負荷を抑えた資源循環のモデルを生み出すことができます。
平本 ── 事業は上手く進んでいるのでしょうか?
山﨑 ── はい。既に、量産しています。宮城県白石市にLIMEXを年間6000トン生産できる国内第一プラントが稼働しています。そして2020年には、同県多賀城市に年間2万5000トン生産できる量産に特化した第二プラントが完成する予定です。第二プラントには、世界各地へと生産拠点を広げるためのモデル工場という役割もあり、ここから世界に向けた展開をしていきます。
平本 ── 私は、金沢工業大学で社会課題解決型のビジネスを研究しています。SDGsに関わるビジネス・地域経営・教育という3つの領域で、先進事例の研究や新規事業の創造、政策立案の支援、教育コンテンツの作成などを通じて、多くの経営者や市民団体と連携しながら、SDGsを促進するためのエコシステムを作る取り組みをしています。
金沢工業大学は、2017年に第1回「ジャパンSDGsアワード*3」のSDGs推進副本部長(内閣官房長官)賞を大学で唯一受賞した、SDGsに関する取り組みが活発な大学です。学内には「SDGs推進センター」という組織があり、私がそこのセンター長をしています。SDGsで掲げている17の目標は、多くの産業・学術分野の知識と取り組みを組み合わせないと達成できません。このため、SDGs推進センターでは、大学の教員個人の研究にとどまらず、全学部、全学科で横断的にSDGs関連の研究テーマに取り組んでいます。そして、ここは外部のステークホルダーと対話・連携するための窓口にもなっています。
山﨑 ── 大学全体を挙げての大きな取り組みとしてSDGsに貢献する活動をしているのですね。平本先生は、いつから社会課題解決型のビジネスの研究をしていたのですか。
平本 ── 私は元々、SDGsの前身であるMDGs(ミレニアム開発目標)*4に関わる活動に、野村総合研究所の経営コンサルタントの立場で参加していました。そこでは、経済産業省や外務省、国際協力機構(JICA)、日本貿易振興機構(JETRO)、UNDP、ユニセフ、UNIDO等の国連機関などと一緒に、民間企業の力を活用して、MDGsで掲げていた8つの目標を達成するための官民連携政策の策定を支援していました。併せて、民間企業が関連ビジネスを創出するための支援も行い、様々な業界の企業と一緒にアジア、アフリカの途上国に実際に行って、一緒にビジネスを立ち上げてきました。