- 井田 茂
- 東京工業大学教授
- 黒田 有彩
- タレント
PRESENTED BY
クロストーク ”テクノロジーの未来を紐解く
前編:相次いだ系外惑星の発見
規制緩和によって民間に宇宙開発のフィールドが開放され、世界中でさまざまな企業がしのぎを削っている宇宙ビジネスの現場。そこでは最先端の研究拠点と手を携えて進むプロジェクトも少なくない。近年、特に目覚ましい飛躍を遂げている天文観測の研究分野では、宇宙探査に関してどんな未来像を描いているのか。系外惑星を研究する東京工業大学地球生命研究所(ELSI)の井田茂教授のもとに宇宙飛行士を目指すタレントの黒田有彩さんが訪ねた。
黒田 ── 今日は井田先生の研究室がある「ELSI(東京工業大学地球生命研究所、通称エルシー)」に初めてお邪魔しました。この施設ではどんな研究が行われているのですか?
井田 ── ここは文部科学省が選定した世界トップレベル研究拠点です。国内では理工系で9つある選定研究拠点の1つなんですね。他の施設は再生医療やエネルギー、材料の研究開発といった分野から選ばれていますが、ELSIは少し毛色が変わっていて、地球の起源と生命の起源を探るのが目的です。さらには、宇宙における生命の可能性を議論しようというのが、研究所全体の大きな方針となっています。
私たちの研究はすぐに経済やビジネスに直結する分野ではないかもしれません。しかし、こうした普遍的な分野を追究するのも科学の重要な使命ですから、国がサポートして集中的に資金が投入されています。
黒田 ── 見ていると半分ぐらいは海外から来ている研究者のようですね。私が学んだお茶の水女子大学にも留学生はいましたが、研究者となるとあまり見かけませんでした。ここはすごく国際的な雰囲気で、一歩足を踏み入れると「あれ、私はどこの国にいるんだっけ?」と不思議な感覚になります。
井田 ── 世界的にトップレベルの拠点を目指しているため公用語は英語になっていますし、確かに特別な場所だと思います。お茶の水女子大といえば、10年ぐらい前に森川(雅博)先生に呼ばれ、大学院生向けの集中講義をしましたよ。
黒田 ── そうだったのですね。私も物理学科の学部生時代、森川研で研究をしていました。4年生になると、毎年だいたい2名が国立天文台の重力波推進室に行かせてもらえるんです。そこでは川村(静児)先生にもお世話になりました。
今から8年ぐらい前のことですが、そのときは他の物理学科の生徒ですら重力波*1という言葉になじみがなかったのを覚えています。当時はまだ、「重力波が30年以内に観測できればすごい」と言われていた時代だったので。
井田 ── それが今や、重力波の研究は一気に花開きましたね。もうずいぶん昔からやっていたのになかなか成果が出なかったので、若い人がやるにはちょっと辛い分野だと思っていたんですが。
黒田 ── それが急に、みんなの知るところとなったのは、とても感慨深いです。