No.019 特集:医療ビッグデータが変える医学の常識

No.019

特集:医療ビッグデータが変える医学の常識

連載01

ヘルスケア/メディカルに半導体チップが生きる。

Series Report

第1回
ヘルスケアチップがカギ、次のウェアラブル設計へ

2018.12.27

文/津田建二

ヘルスケアチップがカギ、次のウェアラブル設計へ

これまで、半導体の世界と医療の世界は縁遠かった。ところが最近、医療問題を半導体チップで解決しようという動きが出ている。ますます顕著になってきた高齢化社会では、過疎地での医師不足、ベッド数不足、医療費の高騰など、医療分野の問題が多い。しかし、こうした問題も、家庭で小型の機器による計測・診断ができれば、一挙に解決するのだ。さらに、家にいながら医師の診断を受けることができれば、早期発見もしやすくなる。連載第1回目では、小型の医療機器を実現するために欠かせない半導体とその動向についてレポートする。そして第2回目はヘルスケアデバイスの現状と半導体、第3回目は医療全般にわたる今後の方向についてお伝えしていきたい。

最初のヘルスケアチップが登場してから10年。イギリスのファブレス半導体メーカーのトゥーマズ(Toumaz)社が世界に先駆けて、心拍数や体温などを常に計測し続ける機器の提案を行い、実験を始めた。これは、センサ、マイコン、送信機、アンテナを備えたフレキシブルプリント回路基板を、絆創膏のように人体に張り付けるものだ。テレスコープシリーズでもNo.010の連載「医療・ヘルスケアの電子化」で報じたように(参考資料a)、これを病院で導入した実験例では、1回の入院日数が6日間減少、1回の入院費用を9004ドル削減、といった効果が表れた(現在は本事業からは撤退している)。

新プレーヤーが続出

最近では既存の半導体企業が、ヘルスケア業界に進出している例もある。インテル(Intel)社やザイリンクス(Xilinx)社、マキシムインテグレーテッド(Maxim Integrated)社、アナログデバイセズ(Analog Devices)社、テキサスインスツルメンツ(Texas Instruments)社などがその代表だ。まだ病院で使うレベルには至っていないものの、ヘルスケアデバイス向けの半導体チップは既に登場しており、今後は改良が進んでいくだろう。

体温や心拍数、脈拍などを常時計測するウェアラブルデバイスとしては、アップルウォッチがよく知られたものだ。ヘルスケアデバイスは生体情報を表示するものであるから、本来は医師との協力が欠かせない。

光を使う心拍数計測

体温だけではない。心電図(ECG)、心拍数の時間変化などのデータと、現場の医師が使っているECGなどのデータが一致しているかという確認も必要となる。現在、アップルウォッチやフィットビットなどのウェアラブル機器で心拍数を検出するためのテクノロジーは、緑色の光を皮膚の上から照射し、動脈血液流の反射光を検出している。血液中のヘモグロビンが緑色の光を吸収しやすい性質があるため、心臓から送り出される血液の反射光強度の時間変化を見ることで心拍数を算出する。

医療現場で心拍数を計測する場合は、心臓の近くに電極を置いて、鼓動を小さな電気パルス(心臓の鼓動と協調して表れる電流の鼓動)として検出している。しかし、光を利用する方法であれば、検出デバイスを身体のどこにでも置けるうえ、その精度も高いようだ。ただし、医師と共著で発表された論文(参考資料b)によれば、ウェアラブルデバイスを付けた腕を激しく動かしたり、肌温度が低下したりすると、精度が落ちるという。

ウェアラブルなヘルスケアデバイスが実現したカギは、半導体チップそのものにある。半導体チップは小型軽量で、消費電力も小さく電池を長持ちさせてくれるからだ。半導体チップの役割は、心拍計であればヘモグロビンの検出や、その時間変化、データの収集、演算、保存、液晶への表示など多岐にわたる。もし半導体チップがなければ、これらの機能を腕時計のような小さなデバイスで実現することが絶対にできなかった。

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