No.024 特集:テクノロジーは、これからのハピネスをどう実現できるのか

No.024

特集:テクノロジーは、これからのハピネスをどう実現できるのか

連載02

ニューノーマル時代にチャンスとなるテクノロジー

Series Report

第1回
新型コロナと付き合いながら成長する道を探る

2020.09.23

文/津田建二

新型コロナと付き合いながら成長する道を探る

新型コロナウイルスは、世界中に大きな影響を与えた。これまでにわかった基本的な特性は、感染力も毒性も突然に変異することである。そしてインフルエンザウイルスと似た症状から肺炎に至り命を落とすこともある。こういった理解を元に、簡単には退治できない新型コロナと付き合いながら生きていく「ニューノーマル時代」は、産業にとって悪いことばかりではない。半導体やITにとっては新しい需要を生むチャンスでもある。どのような特性からどのようなチャンスがあるのか。この連載では、ニューノーマル時代こそチャンスとなる数々のテクノロジーについて紹介する。

新型コロナウイルスは、2019年秋ごろから中国武漢で現れ、世界中に感染が拡大したと言われている。中国・浙江大学の研究チームの査読前の論文(参考資料1)によれば、突然変異を繰り返した最強種は最弱種の270倍ものウイルス量を生み出すという。台湾はいち早く情報をキャッチし、武漢からの渡航者全員の検査、中央感染症指揮センター(CECC)の設立、感染拡大阻止に向けて省庁間の協力を円滑にする態勢を整えるなど、政府が即座に対応したため、抑え込むことができた。それでもポツリ、ポツリと新規感染者が現れているようだ。

新型コロナは、特に人が集まるサービス産業や消費者向けの製造業に大きなダメージを与えた。集客が売り上げに直結する飲食業、旅行業、運輸・航空産業、イベント業などに加え、自動車産業は10日間程度、工場を停止するに至った。

ただし、これだけで経済が止まるわけではない。国内GDP550兆円のうち、サービス産業は22%、すなわち121兆円。そのうち外食業は25.6兆円、観光消費全体が25.5兆円、鉄道8兆円、航空3兆円(国際線含む)、イベント消費18兆円とされており、これらの合計は80兆円となる。日本のGDPが約550兆円から見ると15%程度である。80兆円の売上が仮に80%減の1/5に減ったと仮定すると、16兆円は生産し、残りの64兆円が減少することになる。GDPに対して11.6%の減少となる。自動車産業が10日間停止したとしても損失は1兆円程度にすぎない。つまり、経済の大部分は回っており、コロナ対策にしっかり取り組んでも経済が止まるわけではないのである。

経済を優先するとしても、コロナ以前の状態には、まだ戻れない。コロナ対策を十分に取った上で経済活動しなければならない。これがニューノーマルである。

一方で自動車産業を除く製造業はそれほど悪くない。半導体産業は前年比でプラスが見込まれるほどである。むしろ、米中摩擦や日韓問題のような政治の影響の方がよほどマイナスになる度合いが大きい。半導体が好調なのは、半導体をけん引するIT機器がテレワーク(WFH: Work From Home)には欠かせないからだ。これまでの企業内でのパソコンではなく、家庭でのパソコンと、クラウドでのサーバーへの需要が高まっているためだ。テレワークが常識となり、どこからでも仕事ができるようになると、クラウドを多用する。クラウドのハードウエアはデータセンターであり、仮想化技術を駆使するため、プロセッサとメモリ、ストレージなどの半導体チップはいくらあっても足りない。

米国はテレワークの先進国

テレワークは、人の集まりを減らすという対策の一つだ。日本のように常に出社することが原則の社会では、新しい働き方としてテレワークが見直され始めている。しかし世界ではすでにテレワークを基本とする仕事もある。

アメリカのシリコンバレーでは、テレワークは20年くらい前から行われている。例えば、筆者のようなメディアで働いてきた人間は、編集記者も広告営業もテレワークを基本としていたのだ。記者は、電話やテレコンファレンス(電話会議)を駆使して遠方にいても取材し、常に情報を取得できた。広告営業は、自宅からクライアントの企業へクルマで直接出向き、その結果を上司へ電話やメールで報告し、終わったら自宅へ直帰した。クライアントへの訪問が終わるたびにすぐに連絡するため、情報はしっかりと共有できた。しかも1日に4〜5社回れるため業務効率は高い。オフィスには週に1〜2度しか行かないケースが多かった。オフィスに行くのは顧客が来たり、モノを見せたりしながら話をするような場合に限られていた。

そもそも、どこで何をしていても気にせず、結果さえ出せばOKというアメリカの働き方と、日本のように常にオフィスに来ていることで上司は安心するという働き方とは違う。残業時間でさえも、上司が先に帰らなければ部下は帰りにくい日本に対して、米国のビジネスパーソンは5時に退社し夕食を家族でとった後、自宅で残業する人が多い。電子メールが伝達手段になった現在は、メールチェックは寝る前までに必ず行うことがアメリカでは常識だ。オフィスに残ることが良いことでは決してない。

日本では働き方改革が叫ばれていたところにコロナ禍がやってきたため、テレワークは働き方改革の一つになり得ると見られている。しかし、東京都内での電車の混雑を見ている限り、まだ定着していないかもしれない。もちろん業種や職種によってはテレワークできるものばかりではない(図1)。

[図1]在宅勤務できる業種は限られているが、働き方は変わるだろうか
出典:経済産業研究所(権 赫旭氏、萩島 駿氏)
在宅勤務できる業種は限られているが、働き方は変わるだろうか

IT技術者やメディアの編集者、金融・経営専門職などはテレワークしやすい業種だろうが、受付や秘書の在宅率は低い。どうしても人と接触しなければならない職場は、テレワークに代わる代替手段に知恵を絞らざるを得ない。しかし、テレワーク可能な職場については、どんどんテレワークを導入していけばよい。今後、そうした職場や職種が、どれほどテレワークに移っていくのか見守りたい。

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