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老眼鏡のイノベーション!焦点可変レンズシステム

2018.9.25

使用者が見ている対象を認識し、レンズの焦点距離を自動で調整するハイテク老眼鏡「AutoFocals」
courtesy Nitish Padmanaban, Robert Konrad, and Gordon Wetzstein, Stanford University
使用者が見ている対象を認識し、レンズの焦点距離を自動で調整するハイテク老眼鏡「AutoFocals」

加齢と共に起こる厄介な症状の1つが「老眼」だ。加齢に従って、眼球内の水晶体が硬化して、近距離に焦点を合わせづらくなる。老眼に対するソリューションとして最もメジャーなのが老眼鏡だが、最近では遠近両用コンタクトレンズも人気を集めている。遠近両用コンタクトレンズは周辺部と中心部が異なる度数になっており、近くを見る時と遠くを見る時で視線の位置をずらす。日本国内のコンタクトレンズメーカーは、細かく度数を選択できる使い捨てレンズを投入するなどして、老眼需要に対応を進めている。
一方、老眼鏡もデジタル技術によって進化しようとしている。スタンフォード大学のGordon Wetzstein博士らが開発を進めているのは、AR技術を応用したハイテク老眼鏡の「AutoFocals」だ。
プロトタイプのAutoFocalsは、ごついゴーグルのような外観をしている。内蔵されたアイトラッカーが使用者の見ている場所を認識、次に深度センサー付きのカメラでその場所までの距離を推定。液体を満たしたレンズに電気信号が送られ、焦点距離を調整するという仕組みだ。
遠近両用メガネやコンタクトレンズでは、見る場所に応じて視線をずらす必要があるが、AutoFocalsではその必要がない。プロトタイプは市販の部品で構築されており、25cmという近距離に焦点を合わせることに成功した。51歳から81歳までの被験者24人による実験では、遠近両用、単焦点の老眼鏡と比べても、視力、コントラストは同等という評価で、オートフォーカスもごくわずかな遅延しかないという。ただ、写真を見てもわかるように、現在のAutoFocalsのフレームは非常にごつく、普通のメガネの代わりに気軽に掛けられるようなものではない。
しかし、使用者の視線を追跡するアイトラッカーや深度センサー、ソフトウェア技術は、ARやVRのヘッドマウントディスプレイとも共通する。AR/VRヘッドマウントディスプレイが進化していけば、ハイテク老眼鏡が実用化するのもそう遠い日ではないかもしれない。

(文/山路達也)

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