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あらゆるモノをIoT化するスマートタグ

2018.10.22

紙に回路パターンを印刷しただけのシンプルなタグによって、身の回りのあらゆる製品がネットにつながる。
Photos courtesy of Xinyu Zhang
紙に回路パターンを印刷しただけのシンプルなタグによって、身の回りのあらゆる製品がネットにつながる。

IoT(Internet of Things)という用語が一般化してすでに久しい。さまざまなデバイスをネットにつなげて自動的にデータをやり取りさせ、より便利な社会にしようというのが、IoTの基本的な考え方だ。そのため、IoTデバイスには、データを処理するためのCPUや通信チップが必要になってくる。半導体は年々低コスト、低消費電力にはなっているが、まだあらゆるデバイスをIoT化するまでには至っていない。
カリフォルニア大学サンディエゴ校ジェイコブ・スクール・オブ・ エンジニアリングの、Xinyu Zhang教授らの研究チームが開発したのは、従来よりも格段に低コストに、あらゆるものをIoT化するスマートタグだ。
Xinyu Zhang教授がLive Tagと名付けたこのスマートタグは、紙のように柔軟な素材の上に銅の回路パターンが印刷されたもの。CPUや通信チップなどの半導体は搭載されていない。では、どうやってネットにつながるのだろうか?
Live TagはWi-Fiルーターからの無線信号を反射するようになっており、ユーザーがLive Tagに触れると無線信号に変化が生じる。無線信号を受信するレシーバーが信号の変化を感知し、それによってユーザーがどのような操作を行ったのか認識するという仕組みだ。回路パターンや素材を変えることで、Wi-Fiだけでなく、Bluetooth、携帯電話などの周波数帯にも対応できる。
Live Tagのプロトタイプとして研究チームが発表したのは、曲の再生・停止、ボリューム調整が行えるシンプルな音楽コントローラだ。また、Live Tagを飲料水のボトルに装着することで、残っている水量を測定するという応用も示された。
部屋の壁やテーブル、椅子などにLive Tagを装着すれば、スマホやパソコンなしで家電を操作するといったことも可能になる。また、身の回りにあるものにLive Tagが埋め込まれていれば、ユーザーがどんな活動をしているかも測定できるため、リハビリなどに応用することもできそうだ。Live Tagには半導体もバッテリーも搭載されておらず、メンテナンスの必要もない。
ただし、現在のLive Tagはレシーバーとの距離が1m以内でないと使えない。今後、研究チームは通信距離や感度を高め、通常の印刷技術で低コストに製造することを目指している。通信距離やコストの問題がクリアされれば、無人ストアでの決済や店舗での顧客行動分析などにも応用できる可能性があるという。

(文/山路達也)

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