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切り紙から生まれたナノスケールの光操作技術

2018.11.19

集束イオンビームを金属箔に照射して作成した、ナノスケールのパターン。自然界ではありえない振る舞いを電磁波にさせることが可能になる。
Image by MIT
集束イオンビームを金属箔に照射して作成した、ナノスケールのパターン。自然界ではありえない振る舞いを電磁波にさせることが可能になる。

ナノスケールの世界では、折り紙や切り紙といった日本古来の細工が注目を集めている。といっても、小さな折り紙や切り紙のアートを作ろうということではない。超微細な折り紙細工によって「メタマテリアル」を作り、それで光を操作しようというのだ。
メタマテリアルというのは、電磁波に対して、自然界にない振る舞いをさせる物質の総称。例えば、光の屈折方向を通常はありえない方向に変えることで、透明マントを実現しようという研究も進んでいる。
メタマテリアルは、光の波長よりも小さな構造体を並べて作るのだが、そのためには試行錯誤で非常に複雑なパターンを探り当てなければならなかった。
MITのNicholas X Fang教授らの研究チームは、折り紙や切り紙にインスピレーションを受けて、まったく新しいメタマテリアルの作成手法を編み出した
研究チームが用いるのは、集束イオンビームだ。金属箔に低線量のイオンビームを照射すると箔内にたくさんの空孔が生じ、それらの位置によって箔は変形するのだが、研究チームはイオンビームをどう照射すればどう箔が変形するかを導き出すアルゴリズムを開発した。光にどんな振る舞いをさせたいかを決めれば、それに応じてどうビームを照射すればよいかがわかる。
一例として研究チームが作成したのが、時計回りと反時計回りに偏光を分離する、らせん状のパターンだ。こうして作られたメタマテリアルは、グルコースの測定などに応用できるという。グルコース分子には右手型と左手型があり(鏡に写った像のようになっている)、偏光を調べればどちらがどれくらい存在するかを測定できる。また、複数のレーザビームを互いに干渉させることなく光ファイバーに通す通信システムも可能になる。
Fang教授らの研究チームによる手法を用いることで、メタマテリアル作成工程が格段に効率化でき、微細化も行いやすくなるため、メタマテリアルを応用したデバイスが次々に登場する可能性も広がる。高感度センサーや光コンピュータといった分野の研究が加速することになりそうだ。

(文/山路達也)

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