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複数人の間の脳をつなぎ、
共同作業を行うインターフェイス

2018.12.3

テトリスに似た落ちものゲーム。複数人の脳波を共有することで、画面を見られない被験者も正しくブロックを回転できた。
Image by the University of Washington and Carnegie Mellon University
テトリスに似た落ちものゲーム。複数人の脳波を共有することで、画面を見られない被験者も正しくブロックを回転できた

人間の脳で行なっている思考をデジタル化し、別の人間と共有する。超能力のテレパシーからサイバーパンクまで、人間の思考を共有するというアイデアは、古今東西のフィクションで繰り返し使われてきた。そんな夢物語が実現するかもしれない、そう思わせる技術がワシントン大学とカーネギーメロン大学の研究チームから発表された。
BrainNetと名付けられたこの技術は、脳波計と経頭蓋磁気刺激(TMS)装置からなる。被験者が頭に装着した脳波計(電極を脳に埋め込んでいるのではなく、頭皮に装着している)の脳波を記録。このデータを別の被験者が装着しているTMS装置(こちらも脳に埋め込まれているわけではない)にインターネット経由で送信する。TMS装置は、被験者の後頭葉を磁気で刺激するという仕組みだ。
実験に使われたのはテトリスに似たゲーム。プレイヤーは、上から次々と落ちてくるブロックを「180度回転させる」もしくは「回転させない」かを判断して、ゲームを進めていく。
実験は3人1組となって行われ、チーム内の2人がブロックの扱いを判断する。この2人は、ブロックを回転させた方がいいと判断したのなら15Hzの間隔で点滅するLED光を、回転させないのなら17HzのLED光を見ることになっている。点滅周期の違いによって、判断役の脳波にも違いが現れる。
受信者となるもう1人の被験者には、ゲーム画面が見えない。つまり、ブロックを回転させるべきか、回転させない方がいいのか判断できない。判断役の送信者2人から送られてきた刺激を頼りに、ブロックの扱いを決めるしかないのだ。最終的な受信者の判断は、やはり脳波計で読み取られてコンピュータに送られ、ブロックが操作される。
5組の被験者による正答率は81.25%。受信者はゲーム画面が見えていないわけだから、これは3人による共同作業の効果ということになる。
テレパシーのように思考を共有すると思っていた人は、がっかりしたかもしれない。結局、受信者と送信者の間でやりとりしているのは、「早い点滅」か「遅い点滅」かという、1ビットの情報に過ぎないのだ。だが、送受信する刺激の種類が増えれば、より複雑な判断も共有できるようになる。リアルタイムに判断を共有する必要のあるスポーツや軍事等では、革命的な変化が起こることもありえるだろう。

(文/山路達也)

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