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スプレーすればあらゆるものがアンテナに

2019.1.21

エアブラシを使ってインクを吹き付けるだけで、高性能のアンテナが出来上がる。
by Drexel University
エアブラシを使ってインクを吹き付けるだけで、高性能のアンテナが出来上がる。

一昔前の携帯電話には、ひょっこり飛び出したアンテナが必ず付いていた。今時のスマートフォンに目立つアンテナは付いていないが、これは別にアンテナが不要になったということではない。アンテナ技術が進歩しているのはもちろんだが、エンジニアが涙ぐましい努力をして、筐体デザインや内部構造を最適化してきたという面も大きい。
まもなく登場する5G(第5世代移動通信システム)ではIoTを前面に打ち出しているが、デバイスがワイヤレスでつながる世界では、これまで以上に小型で高性能のアンテナが求められている。
米ドレクセル大学の研究チームが発表したのは、スプレーできる高性能アンテナだ。このアンテナは、MXeneでできている。MXeneはドレクセル大学の研究者が2011年に発見した2次元物質で、3層のチタニウム原子と2層の炭素原子からなる。導電性に優れたMXeneはさまざまな分野での応用が期待されており、2014年にはやはりドレクセル大学の研究チームによって粘土状のMXene clayが開発されている。
今回、研究チームはMXeneを水に溶かし、エアブラシでセルロース紙にスプレーしてアンテナを作ることに成功した。
これまでにも、炭素の2次元物質グラフェンや銀など、塗布したりスプレーしたりすることでアンテナを作れる物質はあった。しかし、MXeneのスプレーで作成したアンテナは、グラフェンに比べて50倍、銀インクに比べて300倍、電波送受信の性能が優れているという。
アンテナとして機能する最薄のMXeneは62ナノメートルで、これは一般的な紙の1000分の1の厚みでほとんど透明だ。また他の物質と異なり、MXeneは添加物や加熱工程も必要ない。今後、研究チームは、ガラスや糸、皮などの表面にもMXeneの適用範囲を広げていく予定だ。衣服や家具など日常の中に存在するあらゆるものが、ワイヤレスでつながる世界がやってこようとしている。

(文/山路達也)

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