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砂漠の空気から飲用水を取り出すハイドロジェル

2019.2.4

カーボンナノチューブを添加したハイドロジェルで、安価に淡水を生成する。
© 2018 KAUST
カーボンナノチューブを添加したハイドロジェルで、安価に淡水を生成する。

地球上には豊富な水があるように思えるが、ほとんどは海水で、淡水はわずか2.5%程度。さらに人間が利用しやすい淡水は、地球上の水の0.01%程度と言われている。現在の世界で、淡水は極めて貴重な資源なのだ。海水から淡水を生成する淡水化プラントは電気や化石燃料を大量に消費する上、濃縮された海水が生態系に悪影響を与える可能性も指摘されている。
こうした問題を解決するために、KAUST(サウジアラビア・アブドラ王立科学技術大学)が開発したのがハイドロジェルを使った装置だ。サウジアラビアは、石油依存の経済から脱却するためにさまざまな分野の技術への投資を進めているが、この研究もその一環と言える。
開発されたデバイスのキモは、どこにでもある塩化カルシウムである。塩化カルシウムは安価で、安定しており、無毒。吸水性が高く、乾燥剤として広く使われている。塩化カルシウムが水を吸収すると液体になるが、この液体から淡水を取り出そうとすると、装置が複雑になりコストが跳ね上がってしまうという問題があった。
研究チームは、固体のまま大量の水を保持できるポリマー、ハイドロジェルに塩化カルシウムを加え、さらに少量のカーボンナノチューブも加えた。カーボンナノチューブは、太陽光を効率的に吸収し、熱に変換できるという性質がある。
このハイドロジェルを35g利用した装置を使うと、湿度60%の夜間に37gの水を吸収できた。翌日、自然光を2.5時間照射すると、吸収した水の大部分が装置内に放出された。
研究チームによれば、1日当たり3リットルの水を生産できる淡水化装置を作った場合、ハイドロジェルの材料費は1日当たり0.5セント以下と極めて安価だという。

(文/山路達也)

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