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Wi-Fiの電波を電力に変換する2Dマテリアル
2019.4.8
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スマートフォンやスマートウォッチを始めとしたウェアラブルデバイス、各種センサーなどのIoTデバイス。これらデバイスにとって最大の技術的な障害はバッテリだと言っても過言ではない。CPUやGPUといったプロセッサの進化に比べて、バッテリ容量の進化は(進んでいるとはいえ)圧倒的に遅い。
ではもし、バッテリなしでもデバイスを使い続けられるとしたら?
これを目指しているのが、エネルギーハーベスティングと総称される技術だ。環境中にある光や電波、熱、振動などからエネルギーを取り出すことができれば、デバイス本体にバッテリを備えていなくても動作に必要な電力を供給できる。太陽電池も、エネルギーハーベスティングの一種といえる。
しかし、エネルギーハーベスティングでウェアラブルデバイスやIoTデバイスを動作させるのはなかなか難しい。電卓や時計程度なら小さな太陽電池でも動かせるが、高度な処理はできない。電波から電力を取り出す研究も進められているが、Wi-Fiや携帯電話網等で使われているギガヘルツ帯の電波から、十分な電力を取り出すことはできていなかった。
MIT、マドリード工科大学、米陸軍研究所、マドリード・カルロス3世大学、ボストン大学、および南カリフォルニア大学の研究チームは、2次元マテリアルを使ってWi-Fiから電気を取り出すデバイスを開発した。
マイクロ波を直流電流に変換するアンテナはレクテナと呼ばれる。ギガヘルツ帯を補足できる従来のレクテナはシリコンまたはガリウム砒素を利用しているので折り曲げられない。また柔軟な素材でできたレクテナは、ギガヘルツ帯を補足できないという短所があった。
今回の研究では、3原子分の厚みしかない2次元マテリアル、二硫化モリブデンを利用。約150μWのWi-Fi電波から約40μWの電力を生成することに成功した。このデバイスは、柔軟かつ安価。ロール状に巻いた基板に回路パターンを印刷し、またロール上に巻き取る、ロール・ツー・ロール方式での製造が可能だという。
東北大学は平均電力50μW以下で動作周波数200MHzのマイコンの実証に成功しているが、こうした超低消費電力デバイスとエネルギーハーベスティングによって、まもなくIoTは新しいステップに進むことになりそうだ。