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2021年、火星の空を飛ぶヘリコプター

2019.7.8

真空チェンバー内で浮上実験を行っている「Mars Helicopter」
Credits: NASA/JPL-Caltech
真空チェンバー内で浮上実験を行っている「Mars Helicopter」

2020年代にはさまざまな宇宙開発計画を各国が実施することになっているが、中でも注目されているのが火星関連ミッションだ。
2020年夏には火星探査ローバー「Mars 2020」が打ち上げられ、2021年2月にジェゼロ・クレーターへ到着する予定で、地質評価や生命存在の痕跡、居住性の検証などを行うことになっている。
このMars 2020と共に打ち上げられるのが「Mars Helicopter」、文字通り「火星の空を飛ぶヘリコプター」。重量は1.8キログラム、二重反転式ローターの軽量ドローンだ。火星の夜は、気温がマイナス90℃にまで下がるため、機体の保温機能も備えている。
ヘリコプターということはローターを回転させて揚力を発生させるわけだが、そもそも火星にはヘリコプターが飛べるほどの大気が存在するのか、という疑問が湧くかもしれない。
火星の大気密度は、地球のわずか1パーセント程度。地球上で同じ大気密度にしようとすれば高度3万メートル以上に上らなければならないのだ。
そこでNASAの研究チームは、幅7.62メートルの真空チェンバーを利用。チェンバー内の空気を抜き、火星大気の主成分である二酸化炭素を注入した。また、火星上では重力も地球上の3分の2だ。これを再現するために、Mars Helicopterの上部にはモーターで動作するランヤードが取り付けられ、常に機体が上方へと引っ張られるように工夫した。
Mars Helicopterのローターは、通常の約10倍の速度で回転し、薄い大気の中でも必要な揚力を生み出す。3月に行われたチェンバーでの実験では、5センチメートルほどの高度を数十秒間浮上した。
火星でのミッションでは、最終的に数百メートルの高度を90秒間ほど飛行する予定だ。地球外の大気中を飛ぶ飛行体は、もちろんこれまでに存在しない。ヘリコプターによって、地上の探査機だけでは得られない地表の分析や安全な走行ルートの確保も可能になるという。

(文/山路達也)

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