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ポリマーに亀裂を入れて、高精細カラー印刷

2019.8.5

1mm四方にカラー印刷された北斎の「神奈川沖浪裏」。インクは一切用いられていない。
photo by Kyoto University iCeMS
1mm四方にカラー印刷された北斎の「神奈川沖浪裏」。インクは一切用いられていない。

カラー印刷を行うためには、色の着いた染料なり顔料なりが必要だというのが常識だ。ところが世の中には、それ自体に色が着いていないのにも関わらず、色が見えるものがいくつもある。
鮮やかな青色をしたモルフォチョウの羽、クジャクやカワセミの羽といった生物のほか、人工物ではシャボン玉の膜やCDの表面などに見える色は構造色と呼ばれる。光の波長以下の微細構造によって光が干渉し、さまざまな色彩が現れるのだ。
京都大物質-細胞統合システム拠点(iCeMS、アイセムス)のシバニア・イーサン教授(化学工学)らの研究グループが開発したのは、構造色によって高精細なカラー印刷を行う、OM(Organized Microfibrillation:組織化したミクロフィブリレーション)技術である。
高分子(ポリマー)でできた物質、例えばプラスチックの下敷きを繰り返し折り曲げていると、折り目が曇ったような白色になる。これはフィブリルという細い繊維状の亀裂ができたことによるものだ。
研究チームは、ポリマーに特定の波長の光を反射する微細なフィブリルを規則的に生じさせて、青から赤まで全ての可視光を発色させることに成功した。フィブリルは、ポリマーに光を照射して、溶剤で現像して作成する。
OM技術のデモンストレーションとして、研究チームは北斎の「神奈川沖浪裏」を1mm四方のサイズでフルカラー印刷することに成功。カラーインク等は一切使用せず、14000dpiの高精細なカラー印刷が可能になった。
研究チームによれば紙幣の偽造防止などのほか、将来的には、コンタクトレンズにOM技術を組み込んで生体情報を送信するといったことも検討しているという。
また、デモンストレーションではポリマーが用いられたが、金属やセラミックなどのマテリアルでも亀裂を制御することで、構造色を出せるかもしれないという。

(文/山路達也)

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