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世界をネットで覆うのは、数千の人工衛星か、
無人のドローン飛行機か

2019.9.9

ソフトバンク傘下のHAPSモバイルが開発した無人飛行機HAWK30
ソフトバンク傘下のHAPSモバイルが開発した無人飛行機HAWK30

宇宙ビジネスが活気づいている。その先端を走るのが、民間宇宙開発企業Space XのStarlinkプロジェクトだろう。これは、高度2000キロメートル以下の低軌道に、12000基の小型通信衛星(衛星は1つあたり約200キログラム程度)を送り込んで、衛星ネットワークを構築しようというもの。2019年5月には、Falcon 9ロケットによる最初の60基の打ち上げに成功している。Space Xは、1年に1000〜2000基のペースで衛星を打ち上げ、2020年には通信サービスを開始する予定だという。将来的に衛星同士はレーザーで通信を行う計画になっており、これが実現すれば光ファイバーよりも低遅延で通信できるとも言われている。衛星からの電波を受け取る地上局についてはまだ詳細が明らかになっていないが、Space Xは地上の接続サービスと競争できる価格だと述べている。
Space X以外にも、OneWebやAmazonが低軌道へのインターネット通信衛星を投入する計画を発表しており、地球の低軌道は今後数年で恐ろしく混雑することになりそうだ。
熱い注目を浴びている低軌道インターネット通信衛星だが、懸念されているのはコストだ。衛星の製造、ロケットの打ち上げなど、Starlinkの場合、衛星網構築には100億ドル以上の費用がかかり、将来的には寿命の尽きた衛星の処理コストも掛かってくることになる。
低軌道通信衛星の対抗馬となりそうな技術も登場している。こちらが飛ぶのは、宇宙よりももう少し下、高度20キロメートルの成層圏である。成層圏に無人飛行機を飛ばして、通信基地局として運用しようというわけだ。ソフトバンク傘下のHAPSモバイルが開発した無人飛行機HAWK30は全長78メートル、翼に搭載されたソーラーパネルで発電して、10個のプロペラを駆動し、数ヶ月間安定して飛行することが可能だという。2023年頃には、HAWK30の量産化と接続サービスの提供が行われる予定になっている。
また、Alphabet傘下のLoonは、成層圏の最上部に気球を飛ばすソリューションを開発中だ。こちらは気流に応じて気球の高度を調整し、同じ地域に留まって安定した通信ができるようにしているのがポイントだ。
低軌道通信衛星と成層圏無人飛行機や気球、現段階では詳細が不明な点も多く、何が覇権を取るのかはまだ見えない。用途によって相互補完して棲み分けていくことも十分にありえる。
確かなのは、今後数年で「圏外」は地球からほぼ消滅し、どんな僻地もネット経済に組み込まれていくということだろう。

(文/山路達也)

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