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着用するだけで食べ物の味を変える
手袋型デバイス

2019.9.24

手袋型デバイスによって「電気味覚」を付与することで、食品を食べたときに感じる味が変化する。
出典:明治大学総合数理学部 宮下芳明研究室
手袋型デバイスによって「電気味覚」を付与することで、食品を食べたときに感じる味が変化する。

テクノロジーによって、人間の知覚を拡大する試みは急速に進んでいる。中でも進んでいるのが、VRやARに代表される、視覚や聴覚、そして触覚の分野だろう。普及価格帯のVRヘッドマウントディスプレイでも、驚くほど臨場感のある仮想現実を体験できるようになってきた。
一方、嗅覚や味覚に関しては、視覚や聴覚ほど研究開発は進んでいない。多種多様な化学物質が味覚細胞に生じさせる感覚を、疑似体験させる段階にはまだ至っていないのが現状だ。
しかし、明治大学総合数理学部先端メディアサイエンス学科の宮下芳明教授、同学科3年の鍜治慶亘氏らが開発した「手袋」は、味覚のバーチャル体験に一石を投じることになりそうだ。
この研究のキーワードとなるのは「電気味覚」。味覚を感知する感覚器に電気刺激が加わると、味が変化したように感じる現象だ。
開発された手袋型デバイスは、人差し指の部分に電極が取り付けられている。ユーザーが手袋を装着して、金属製食器や食品を持って食べると、電気味覚が得られるようになっている。具体的には、食品の塩味や酸味、甘味などが増減する。食品を握る人差し指の位置によって抵抗値が変わり、それに伴って味も変化するという。
これまでにも電気味覚を実現する研究は行われてきたが、特殊な食器を用いるため扱いづらく、また手づかみで食べる食品に関しては電気味覚を与えることができなかった。手袋型デバイスにすることで、幅広いシチュエーション、食品について電気味覚を加えることが可能になった。
エンターテインメントとして面白そうなデバイスだが、研究チームは健康分野での活用も検討しているという。例えば、塩味の薄い減塩食であっても、このデバイスを介すれば濃い味が楽しめるようになる。ダイエットへの応用も期待できそうだ。

(文/山路達也)

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