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原子10個分の厚さしかない断熱シート

2019.10.21

原子10個分の厚みの断熱シート。100倍の厚みがあるガラスシートと同等の断熱性がある。
Image credit: National Institute of Standards and Technology
原子10個分の厚みの断熱シート。100倍の厚みがあるガラスシートと同等の断熱性がある。

近年の物理学、材料工学分野の成果の中でも、とりわけインパクトが大きかったのは「原子層物質」の発見だろう。2004年には黒鉛から炭素の単原子層物質「グラフェン」が分離され、ダイヤモンド並みの強度でありながら柔軟、高い電気伝導率と熱伝導率、耐熱性等、その特性に世界中が驚嘆した。その後、ケイ素やホウ素、ゲルマニウム、スズなどでも原子層物質が見つかり、原子層科学という新しい研究分野が生まれ、応用も日々広がり続けている。
スタンフォード大学Eric Pop教授らの研究チームが開発したのは、10原子分の厚み(2〜3ナノメートル)の断熱シートだ。この断熱シートは、100倍厚いガラスシートと同等の断熱性がある。
新たに開発された断熱シートは、グラフェンとその他3種の原子層物質(各3層)で構成されている。
電子機器などで電子が導電体の中を流れる時、その電子は材料の原子と衝突して振動させ、これが熱として感知される。研究チームは、熱を極めて高周波の音として考え、その振動を抑えようと考えた。防音・断熱性の高い窓はガラスと空気の層を交互に配置しているが、これと同様に異なる種類の原子層物質を組み合わせることで、振動エネルギーを大幅に減衰させることに成功したのである。
半導体などが発する熱は機器の誤動作や損傷につながるため、これまではガラスやプラスチックなどを使って断熱する必要があった。断熱シートが原子10層分で済めば、電子機器を従来よりも大幅に小型化、薄型化できる可能性がある。研究チームは断熱シートを低コストで大量生産する手法に取り組む予定だが、将来的には材料内部で生じる原子レベルの熱を音としてコントロールする新しい科学分野が生まれるかもしれないという。

(文/山路達也)

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