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体にジャストフィットの新型宇宙服

2019.12.23

動きやすさが従来よりも大幅に改良された、NASAの新型宇宙服「xEMU」
Photo Credit: (NASA/Joel Kowsky)
動きやすさが従来よりも大幅に改良された、NASAの新型宇宙服「xEMU」

先進的な言葉のイメージと裏腹に、宇宙開発は年代物のテクノロジーが長年使われ続けている分野でもある。ISS(国際宇宙ステーション)への往復に使われているのは、開発されてから40年以上も経ったロシア(開発当時はソ連)のソユーズだし、NASAの宇宙飛行士が使っている宇宙服は基本的に70年代に開発されたものだ。GPSや通信衛星などの人工衛星は進歩したものの、アポロ計画で12人もの人間を月に送り込んだことを考えると、宇宙開発は遅々として捗っていないともいえる。
しかし、2024年までに人間を再度月に送り込む、NASAの「アルテミス計画」に伴って、さまざまな新技術開発が急ピッチで進んでおり、宇宙服も大幅に進化することになる。
2019年10月にNASAが発表した新型宇宙服「xEMU」(Exploration Extravehicular Mobility Unit)は、70年代の宇宙服に外見は似ているが、動きやすさが大幅に改良された。アポロ計画での月着陸の様子を見たことのある人ならわかるが、従来型の宇宙服はしゃがんだり、腕を自由に動かすことも難しい代物だった。xEMUでは、宇宙飛行士ごとに身体を3Dスキャンして、各部がぴったりとフィットするようになる。ブーツの靴底が柔らかくなり、新しい関節も増えたことで、立ったりしゃがんだりといった動作もスムーズにできるという。昔の宇宙服は着脱も一人では行えず、人手を借りてある程度広いところで行う必要があったが、xEMUは背後から入る仕組みになっており着脱作業もスピーディに行えそうだ。
アルテミス計画には間に合わなさそうだが、新しいコンセプトの宇宙服としては、MITのHSL(Human Systems Laboratory)においてDava Newman博士らが身体に密着するタイプのスキンタイト宇宙服「BioSuit」を開発している。
かつて世界が期待したよりも半世紀ほど遅れてしまったが、月の有人探査を契機に宇宙開発が活気づくことを期待したい。

(文/山路達也)

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