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電気で潤うコンタクトレンズ
2020.3.16
ウェアラブルデバイス、AR(拡張現実)といった分野では、ユーザーにデバイスを装着していることをできるだけ意識させないことが重要になってくる。スマートウォッチでは手首、ワイヤレスイヤホンでは耳と来て、次に来るのはやはり眼だろう。VR用ヘッドセットも少しずつは普及しているが、ユーザーに負担を掛けない形となれば、やはりコンタクトレンズタイプが本命と考えられる。
2014年にはAlphabet参加の企業が血糖値測定コンタクトレンズの開発を公表(2018年に開発中止)したほか、プリンストン大学による3Dプリンタでコンタクトレンズに電子回路を作る技術や、最近では米スタートアップ企業のMojo VisionによるARコンタクトレンズ「Mojo Vision」などの開発計画が発表されている。
コンタクトレンズタイプのデバイスには多方面から期待が寄せられているわけだが、そもそもこうしたセンサーやディスプレイを搭載した高機能コンタクトレンズを眼に入れて快適に使えるのだろうか?
こうした課題に応えられそうなのが、東北大学大学院工学研究科の西澤松彦教授のグループが開発した「電気で潤うコンタクトレンズ」だ。
ソフトコンタクトレンズを装着すると、眼球表面の水分の蒸発が促進されるため眼が乾燥する、いわゆるドライアイの症状が出やすい。ソフトコンタクトレンズ各社はレンズの保湿性能を競っていたが、東北大学の研究チームが採ったのは、レンズ内に通電することで水流を発生させて乾燥を防ぐというアプローチだ。
研究チームは独自のハイドロゲル素材を開発、これに通電することで電気浸透流が発生させられることが検証された。この仕組みを使うことで、下瞼裏から涙を汲み上げてレンズを湿潤な状態に保てると期待される。また、生体親和性の高いバイオ電池を搭載しこれを電源とすることで、外部からの給電を必要としないデバイスが実現可能だということも示した。
これから電池の小型化や耐久性の向上など多くの課題を解決する必要はあるだろうが、この成果は高機能コンタクトレンズタイプデバイスへのマイルストーンになりそうだ。