Science Newsサイエンスニュース
月面にローバーを低コストに着陸させる
「パレット式着陸船」
2020.4.20
NASAのアルテミス計画では、2024年に月面へ宇宙飛行士を送り込むことになっている。当然のことながら、宇宙飛行士をロケットに乗せて打ち上げて、おしまいというわけにはいかない。月面での調査や拠点を作るためのさまざまな物資も送り込む必要がある。NASAにとっては月がゴールではなく、その先には火星探査などのプロジェクトが控えている。将来を見越した物流の仕組みを構築することも、アルテミス計画の重要な目的だ。
2017年12月に発表された商業月面輸送サービス(CLPS:Commercial Lunar Payload Services)プログラムは、月面への科学技術機材の運搬事業を公募し民間企業に委託するもので、9社が選定された。2019年5月には、Astrobotic、Intuitive Machines、Orbit Beyondの3社に、無人着陸機の開発から物質の輸送を委託することが発表されている。Orbit Beyondは熔岩平野の雨の海クレーター、Astroboticは死の湖クレーター、Intuitive Machinesは嵐の大洋クレーターもしくは晴れの海にペイロードを輸送する計画を明らかにしている。
2019年11月には、NASAがパレット式着陸船のリファレンスデザインを公開した。これは月の極に約300キログラムの物質を低コストで輸送するための、シンプルなロボット着陸船のコンセプトだ。
ロケットから射出された着陸船は、着陸場所の選定から月面着陸までの処理を自律的に行う。搭載されているローバーは物資を目的地へと運搬し、着陸船自体は周囲の写真撮影などを行い、着陸から8時間後には機能を停止する。
興味深いのは、この着陸船が費用対効果を最優先事項にしていることだろう。長期間の稼働は最初から想定されておらず、不要な装備を極力排した構造になっている。月面での本格的な宇宙ビジネスがいよいよ始まろうとしているのだ。