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超音波デバイスがリチウム金属電池の実用化を近づける
2020.5.15
リチウムイオン電池の次を担うさまざまな電池の開発が進められている。その1つがリチウム金属電池だ。負極に炭素などを使うリチウムイオン電池と異なり、リチウム金属電池は負極に金属リチウムを使う。リチウム金属電池のエネルギー密度はリチウムイオン電池の2倍で、一次電池(充電できない使い捨ての電池)はすでに存在するが、充電可能な二次電池はまだ研究段階だ。
リチウム金属二次電池の実用化における最大の障害は、充放電ですぐに劣化してしまうことにある。充放電を行うと、すぐにデンドライトという樹状のリチウムが析出して電池容量を低下させてしまうのである。デンドライトの成長によっては、電池がショートして発火事故を起こすことも少なくない。
リチウム金属電池の課題を解決するためにカリフォルニア大学サンディエゴ校の研究チームが開発したのが、超音波放射デバイスだ。このデバイスは、1億〜100億ヘルツの超音波を発生するもので、スマートフォンに使われている部品を用いて作られている。
この超音波放射デバイスを電池に搭載すると、超音波が発生させて電解液に循環電流を生じさせる。デンドライトができるのは電解液中のリチウムイオンが消耗して負極にリチウムが不均一に溜まってしまうからなのだが、乱暴に言えば超音波によって電解液をかき混ぜてしまうわけだ。これによってデンドライトの成長を防止し、電池の劣化を防ぐことができる。
研究チームがこの超音波放射デバイスをリチウム金属電池に搭載してテストしたところ、250サイクル以上の充放電が可能になった。この超音波放射デバイスは、リチウム金属電池だけでなく、色々なタイプの電池にも適用可能だ。研究チームはまず現在のリチウムイオン電池に適用する計画だという。