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3Dプリンターで、立体造形物に電子透かしを埋め込む

2020.6.8

3Dプリンターによって出力された立体物。層の厚みを変化させることで、さまざまな情報を埋め込む。
>3Dプリンターによって出力された立体物。層の厚みを変化させることで、さまざまな情報を埋め込む。

写真や動画、音声、書籍等のデジタルコンテンツでは、電子透かしが広く使われるようになっている。著作者や購入者などのデータを暗号化して埋め込んでおくことでコンテンツの不正コピーや改ざんを検出できるようになり、人間の感覚では元データとの違いをまず知覚できない。動画で使われている電子透かし技術には、盗撮されたコンテンツを検出できるものもある。
現在、コンテンツはデジタルデータとして完結しているものがほとんどだが、今後はリアルとの境目も曖昧になっていくだろう。その代表が3Dプリンターによる立体物だ。
奈良先端科学技術大学院大学の光メディアインタフェース研究室が開発したのは、3Dプリンターで出力された造形物に電子透かしを埋め込む技術だ。この技術は、樹脂を熱で溶かして積層する熱溶解積層(FDM)に対応している。
通常FDMでは厚みが一定の層を積層していくのだが、今回発表された技術では、ノズルから吐出される樹脂の量を制御して層の厚みを変化させる。2層が重なっている部分のうち、1つの層は薄く、もう1つの層は厚くなるようにするわけだ。層の厚みは0.2mm程度であり、人間の眼では厚みの違いはほとんどわからない。こうして埋め込まれた透かしの検出には、特殊な機材は必要なく、一般的なドキュメントスキャナを用いる。スキャンされた画像から層の凹凸のパターンを検出し、埋め込まれた情報を取り出す仕組みだ。
立体物に何らかの識別コードを付加する方法としては、QRコードなどを表面に印刷するやり方もあるが、それだと立体物の見た目が台無しになってしまう。層の厚みを変化させる今回の技術ならば、立体物の見た目を変えず、なおかつ低コストで情報を埋め込めるという利点がある。研究チームは、今回の電子透かしの応用として、ネットサービスとの連携や製品の製造・流通管理などを挙げている。

(文/山路達也)

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