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複雑な3Dオブジェクトの隅々までペイント

2020.7.6

3D出力されたオブジェクト(左)に、コーティングを施したもの(右)。入り組んだ内部にもきちんとコーティングが行われている。
Image: Sanjiv S. Gambhir/Nature Biomedical Engineering
>3Dプリンターによって出力された立体物。層の厚みを変化させることで、さまざまな情報を埋め込む。

3Dプリンターが扱える素材も多様になってきた。今では樹脂から金属、ハイドロゲルの素材も扱うことができ、プリンターによっては複数の素材を使ってフルカラー出力できるものもある。とはいっても、3Dプリンターで出力されたオブジェクトがそのまま最終的な成果であることは少ない。細かく色分けしたり、表面をコーティングするといった処理が必要になってくる。特に、ミリメートル、マイクロメートルレベルの微細なオブジェクトとなれば、手作業で塗装・コーティングを行うのは非常に困難だ。
ラトガース大学の研究チームが開発したのは、エレクトロスプレー・デポジション(ESD)という技術を使って、3Dオブジェクトに塗装・コーティングする手法だ。
ESDというのは、先の尖った針状の容器に溶液を入れ高電圧をかけ、霧状になった微細な液滴を対象物にスプレーするという技術。ESDを用いて電圧をコントロールすることで、針の位置や対象物の向きを変えずに、複雑な物体にコーティングできる。研究チームは、50μm〜1cmの隙間がある微小なハイドロゲルのオブジェクトに対して疎水コーティングを行うことに成功した。特に興味深いのは、スプレー針の射線上から外れた、入り組んだ内部もきちんとコーティングできたことだろう。また、精密に塗装・コーティングの範囲を指定できるため、高価な材料も無駄にせずに済む。
こうしたコーティングの手法を使うことで、3Dプリントされたオブジェクトに対して、さまざまな機能を後から付加できる。研究チームは、周囲の環境変化を察知して車載電子機器に伝えるコーティングといった応用も検討しているという。美術品やフィギュアなどでも、より精密な塗装を施した作品が登場してくることになりそうだ。

(文/山路達也)

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