Science Newsサイエンスニュース

AIによる完全自律運航船「メイフラワー自律船」

2020.7.13

エッジコンピューティングによって最適な航路を推定する「メイフラワー自律船」
エッジコンピューティングによって最適な航路を推定する「メイフラワー自律船」

「メイフラワー号」というのは、アメリカ人にとって特別な意味を持っている。1620年、メイフラワー号に乗った清教徒がプリマスに上陸。彼らの抱いた理想は、アメリカ建国に繋がっていった。
2020年9月6日、イギリスのプリマスを出発してアメリカのプリマスへ向かう予定の「メイフラワー号」も、理想を実現するための第一歩という点ではオリジナルのメイフラワー号と共通するが、大きく異なる点が1つある。新しいメイフラワー号を操縦するのは、人間ではない。人工知能によって操縦される自律運航船なのだ。
現在でも自動航行機能を備えた船は数多く使われているが、完全に無人で運航されている船はない。海洋を航行中にはさまざまなアクシデントが発生するため、どうしても人間の判断が必要になるからだ。
新しいメイフラワー自律船は、GPSやレーダー、自動運転車と同様のLiDARなどのセンサー類を搭載。100万以上の画像を元に学習を行ったAIによって、船舶やブイ、陸地等を認識し、適切な対応を取ることができる。
技術的なポイントは、クラウドではなく、船上でのエッジコンピューティングによってデータ処理を行うことだろう。海洋では大容量のデータを安定して送受信できるとは限らないし、通信できたとしても、クラウド上で処理を行っていてはとっさの判断が間に合わない。
メイフラワー自律船は、航行テストのほか、海洋プラスチックや哺乳動物、海水位を観測するためのポッドも搭載しており、科学研究のためのデータ収集も行うことになっている。
2020年はCOVID-19のパンデミックによって、国をまたいだ人の移動が制限されてしまった。今後、物資輸送や科学研究といった用途で、自律船の需要が高くなることは間違いなさそうだ。

(文/山路達也)

Cross Talk

心のスポーツ、ゴルフはAIでどう進化するのか

心のスポーツ、ゴルフはAIでどう進化するのか

前編 後編

Visiting Laboratories

工学院大学 工学部機械工学科 スポーツ流体研究室

生物をまねて高速泳法を創出、バレーボールの最適なボールも実現 ~ 流体力学をスポーツに応用

第1部 第2部

Series Report

連載01

ダウンサイジングが進む社会システムの新潮流

「発電所のダウンサイジング」で、エネルギーの効率的利用を可能に

第1回 第2回 第3回

連載02

アスリートを守り、より公平な判定を下すスポーツテクノロジー

「働くクルマのダウンサイジング」で農業と建設、物流に革新を

第1回 第2回 第3回

TELESCOPE Magazineから最新情報をお届けします。TwitterTWITTERFacebookFACEBOOK