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未来の宇宙旅⾏では、パルサーが灯台になる?
2020.9.8
GPSを筆頭とする衛星測位システムは、地上での移動のあり方を根本から変えた。複数の位置情報衛星からの信号を元に現在位置、時刻を厳密に算出できるようになり、正確なナビゲーションや自動航行・自動運転が可能になった。
それでは、地球を離れた場所でのナビゲーションはどうだろう? 位置情報衛星はあくまで地球の衛星軌道を回っているから、地球外の位置情報取得には使えない。今はまだ宇宙空間を行き来する船はそれほど多くないが、宇宙開発が盛んになってくれば軌道も混雑してくるし、自動操縦の需要も増えてくる。宇宙にも、灯台が必要なのだ。
宇宙の灯台候補として研究が進んでいるのがパルサーだ。パルサーとは、猛スピードで回転している中性子星のこと。強いX線ビームを放出しており、その様子がパルス状に観測されるため、パルサーと呼ばれている。
パルサーは我々の天の川銀河全体に分布していて、なおかつ放出するX線のパルスは非常に安定している。灯台代わりにするにはもってこいなのだ。
NASAが開発しているのは、パルサーを用いたナビゲーションシステムだ。ISS(国際宇宙ステーション)には、NICERという中性子星の内部組成を調べるためのX線望遠鏡が設置されている。NICERは、パルサーからのX線パルスを受信してタイムスタンプを付ける。
NICERのデータから、パルスが太陽系のどこにいつ到達するのかを非常に正確に予測できる。つまり、個々の宇宙船にX線パルスの検出器が装備されていれば、パルス情報を元に宇宙船の現在位置を正確に割り出せるということだ。X線は電波に比べて、宇宙空間の物質に邪魔されることが少ない上、検出器も電波用のアンテナより小型化できるという。
今後は、小惑星や惑星の探査もより低コスト、高精度に行えるようになるかもしれない。