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カメラなしで、個⼈のバイタルサインを遠隔監視?
2020.9.23
ヘルスケアの分野では、人々のバイタルサインの変化を追跡する研究が長年にわたって行われてきた。老人ホームのような介護施設であれば、心拍数や呼吸などの変化を定期的に測定することで、事故を未然に防げる可能性が高くなる。さらに今回の新型コロナが明らかにしたように、高齢者の多い環境で、感染症の拡大をいち早く察知して対処する必要性はますます高まっている。
これまでバイタルサインの変化を継続的に測定するために用いられてきたのは、居住者の動きをカメラで撮影して分析する手法や、居住者自身にウェアラブルデバイスを装着してもらいデータを取得する方法だ。
だが、これらの方法はいずれも課題を抱えている。
カメラを使う方法の場合、居住者が服を変えるだけで識別に失敗してしまうことが多いし、居住者にとっては常に監視されているという居心地の悪さがある。ウェアラブルデバイスの場合は、居住者がデバイスを忘れずに付けておかなければならない。バイタルサインの追跡では、居住者が負担を感じず、プライバシーを侵害しない方法が求められているのだ。
MITのCSAIL(コンピュータサイエンス人工知能研究所)が開発したのは「RF-ReID」(「無線周波数再識別」)という技術だ。RF-ReIDで識別の手がかりとして用いるのは、環境中の無線信号だ。無線信号の変化から、体格や歩行速度、歩行スタイルなどの特徴を抽出して、個人を再識別できた。
これまでCSAILでは、対象との物理的な接触なしに、呼吸や心拍数といったさまざまなバイタルサインを計測する研究を行ってきた。こうした研究をRF-ReIDと組み合わせることで、外見などの個人データを収集することなく、体調の異常を感知して、介護職員に警告を発することができるようになるという。