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表情の変化も読み取れるナノメッシュセンサー

2020.10.19

指先に貼り付けられているのが、今回開発されたナノメッシュセンサー。 Copyright ©2020 School of Engineering, The University of Tokyo
指先に貼り付けられているのが、今回開発されたナノメッシュセンサー。 Copyright ©2020 School of Engineering, The University of Tokyo

人の身体の動きは、モーションキャプチャーなどの技術によってかなり正確にデータ化できるようになってきた。その一方で、顔の表情のデータ化に関してはまだまだだ。カメラから読み取った表情を元に機械学習を用いてアバターにそれらしい表情を付けることはできるが、微妙な表情筋の動きを再現するまでには至っていない。
東京大学 大学院工学系研究科の染谷隆夫教授、王燕特任研究員らが開発したセンサーは、顔の細やかな動きも正確に計測することに成功した。
染谷研究室ではこれまでにも皮膚に貼り付けられる柔軟なセンサーを発表してきたが、今回のセンサーは皮膚本来の動きを阻害せず、細やかな歪みを多点で計測できるのが特徴だ。
センサーは、数層のポリウレタンナノファイバーを非常に薄いジメチルポリシロキサンで強化したもの。ポリウレタンはゴムのような弾力がある素材で、これをノズルに高電圧をかけて材料を噴出させる電界紡糸法によって、直径ナノメートルレベルのファイバー状にした。ジメチルポリシロキサンはシリコーンゴムの一種で、ポリウレタンよりも柔らかい。
こうして作られたセンサーは0.012mg/cm²と軽量で、厚みはわずか430ナノメートルであるため、皮膚に密着する。センサーを貼り付けていない場合と同じくらいの皮膚の伸縮ができ、なおかつ長期の計測に耐えられる耐久性もある(皮膚に8時間貼り付けた後も正確に計測可能)。
喜怒哀楽まで正確に計測できるようになると、映画やゲームといった分野の制作工程が大きく変化することになりそうだ。現在でも、映画やゲームのアクションシーンではCGが多用されるようになっている。今後は、表情に関してもキャプチャデータを元にCGで作成するケースが増えることになるだろう。俳優の役割も、表情の元データとなる素材を提供することがメインになっていく……そんな未来もありえるのだろうか。

(文/山路達也)

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