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切れば切るほど固くなる、切断不可能な複合素材

2020.11.2

アルミニウムとセラミックの複合素材プロテウスを切断しようとすると、工具の刃が破壊されてしまう。 by DURHAM UNIVERSITY/FRAUNHOFER INSTITUTE

世の中には、恐ろしく「硬い」物質がある。例えば、モース硬度10のダイアモンドは世界で一番硬い物質だが、これは傷が付きにくいということであり、特定の方向からハンマーで叩けば意外と簡単に砕くことができる。靱性が高い、つまり破壊しづらい物質としては、鉄鋼が代表的だが、これもカッターなどを使って切断することは可能だ。
ところが、ダラム大学とフランホーファー研究機構の共同研究チームが生み出した金属素材「プロテウス」は、グラインダーやドリル、さらにはウォータージェットカッターといった工具を使っても切断することができない。10mm厚の地雷保護用超高硬度鋼板を切断できるグラインダーの刃であっても、あっという間に破壊されてしまう。
プロテウスは、アルミニウムの発泡体の中にセラミックの球体が埋め込まれた構造になっている。工具の刃がセラミックの球体に接すると、振動が発生して刃を破壊する。ウォータージェットカッターの水流もこうした構造で分散されて、速度が数十分の1になってしまう。また、工具の刃によってアルミニウムの発泡体は粒子状になり、これがサンドペーパーのようになってやはり工具を摩耗させる。
密度は鉄鋼のわずか15%にすぎないプロテウスだが、上記の性質によって切断不可能な素材になっている。
研究チームによれば、プロテウスは生物の構造にインスパイアされたものだという。アマゾンに生息する淡水魚ピラルクは、ウロコが特殊な構造をしていてピラニアに襲われにくい。ウロコ外層にある溝の間隔が、ピラニアの歯の間隔と異なっているのだ。単純に1つの素材の硬度や靱性だけでなく、複数素材の形状や性質が組み合わさって「強さ」を生み出している。
現在、研究チームは市販製品を開発するためのパートナーを探しているとのこと。自転車用ロックや防壁、防護服など、さまざまな分野での応用が期待される。

(文/山路達也)

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