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折り紙にインスパイアされた、
折りたたみ型マイクロボット

2020.11.16

折り紙のような構造を取り入れることで、マイクロボットは複雑な動作も行えるようになる。 © The Regents of the University of Michigan Ann Arbor, MI 48109 USA

1cm以下のマイクロボットは、人間が入り込めない狭い場所の探索を始め、さまざまな用途で利用できると考えられている。世界中で研究が進められている分野ではあるが、まだ実用化レベルには至っていない。
マイクロボットを実用化する上での課題としては、駆動するための電源のほか、サイズが小さいが故に複雑な動作を行えないということが挙げられる。これに対しては、映画『ベイマックス』(原題:Big Hero 6)に登場するように、マイクロボットの群れを制御して複雑な形状や動作を取らせるというアプローチも研究されている。
ミシガン大学の研究チームは、日本の「折り紙」にインスパイアされたマイクロボットを開発した。このマイクロボットは金とポリマーの層で構成されている。金の層に電流が流れると熱が発生し、これによって折り目のついた部分が畳まれる。冷却されると折り目は元に戻り、折りたたんだ状態を維持するにはさらに熱を加える。
今回発表されたマイクロボットの特徴は、可動域の大きさにある。折り紙のように90度以上の大きな角度で折りたためるため、従来は難しかった複雑な形状を取ることができ、それに伴って複雑な動作もできるようになる。マイクロボットをモノを掴む形に変形させたあと、それを別の場所に弾くといった動作もできるようになるわけだ。マイクロボットの可動部分は、最大で1秒間に80回まで動かすことができるため、スピードの要求される作業にも対応できるだろう。
現在のところ、マイクロボットの制御と電源供給は有線で行われているが、将来的にはバッテリーとマイクロコントローラもマイクロボットに搭載されることになるという。
ワシントン大学ではハエ型超小型ドローンSRIインターナショナルではアリの群れのようなマイクロボット軍団が開発されているが、これらと折り紙マイクロボットの技術も融合していく可能性もあるだろう。少し先の未来では、私たちの身の回りには人工の虫たちが常にうろうろしていて、便利なサービスを提供してくれるようになるかもしれない。

(文/山路達也)

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