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工場から⾃動⾞まで、排熱問題を解決する「呼吸」する機械
2020.12.16
あらゆるテクノロジーは、熱とは無縁でいられない。ガソリンエンジンのように燃焼ガスの圧力を使う熱機関はもちろん、それ以外の機械でも適正な温度を維持できなければ、性能が低下したり機構がダメージを受けることになる。機械を冷却する代表的な手法としては、オイルや水を使った液冷、空気による空冷、半導体などを使って熱を移動させるヒートポンプなどがある。
セントラルフロリダ大学の研究チームが開発しているのは、ウォータージェットを使った冷却方式だ。この方式では、機械からの熱が熱伝導率の高い金属チタンに伝わり、それに対してスプレー状のウォータージェットを吹き付けて冷却を行う。ウォータージェットのノズルは髪の毛の約10倍ほどである。
スプレー状の水を使うことで、チタンからの熱を効率よく水滴に吸収できる。冷却に使われた水はタンクに集められ、ポンプでくみ出し再度冷却に使われる。この方式では、従来の液冷に比べて冷却材の使用量も圧倒的に少なくて済むほか、熱源に応じてノズルの向きを変えて対応できるというメリットもある。
研究チームは、高速赤外線サーモグラフィを活用して、冷却性能を最大化する水の量を導き出した。大型電子システムであっても、タンクに溜まる水の量は、300ml程度だったという。
ウォータージェットを使った冷却方式は、大型の電子機器や電気自動車、宇宙探査用の車両、ガスタービンなどに適用できる。
人間も呼吸を通じて余分な熱を体外に排出しているが、ウォータージェット冷却は機械を「呼吸」させる仕組みといえるだろう。