No.016 特集:宇宙ビジネス百花繚乱

No.016

特集:宇宙ビジネス百花繚乱

連載01

デジタル時代で世の中はどう変わるのか

Series Report

ビジネスモデルも変えるインダストリー4.0

生産機械にIoTを組み込むことによって機械の故障を予知できれば、故障する前に部品を取り換えることができ、ダウンタイムを削減できる。また、歩留まりを悪くする要因を分析し改善すれば、良品率が高まり生産効率が上がる。これらを可能にするのが、IoTを利用した製造業の革新「インダストリー4.0」である。

GE社やロールスロイス社などの大企業は、インダストリー4.0によってビジネスモデルを変えつつある。機械の故障を予知し、前もって壊れるであろう部品を取り換えるようにすれば、20年間故障しないジェットエンジンや風力発電タービンを作れるようになる。エンジンやタービンを製造販売するだけではなく、ジェット機が何マイル飛ぶごとにいくら、風力発電機が何kW発電するたびにいくらという従量制の料金体系のビジネスも可能になっていくのだ。すぐに故障する機械では時間の単位で保証できない。インダストリー4.0は生産効率を上げるだけではなく、ビジネスモデルも変えてしまうのである。

IoTとは、実は単なるセンサ端末を意味する言葉ではなく、センサからのさまざまなデータを収集、整理、保存、解析して、意味のある情報に変換するシステム全体を指す言葉である(図4)。だから端末の設計・生産業者だけでなく、ビッグデータを解析する業者やその解析ツールを設計・販売する業者なども、IoTチームには加わっている。IoTで収集したデータは情報に変換した上で、データを収集したセンサにフィードバックしてセンサをチューニングすることが欠かせない。

IoTシステムのコンセプト
[図4] IoTシステムのコンセプト 
作成:津田建二

このため、部品メーカーはデータの意味を理解する必要がある。データから変換された重要な「情報」を手に入れ、センサのキャリブレーションやIoT端末の特性改善に生かさなければ、IoTシステムの主導権を握ることはできない。また、顧客の信頼を勝ち取ることもできないのだ。

デジタル化は半導体チップの増加を意味する

以上、見てきたように、「デジタル化」という言葉は、これまでコンピュータとは無縁の世界にコンピュータ技術が入ってきたことで、使われるようになったという側面がある。これまでできなかったことが、これからはできるようになるということを、端的に示すために使われるようになったのだ。デジタル化が進めば進むほど、エレクトロニクスの世界が広がり、半導体チップがますます多く使われるようになる。これまでは用途が民生機器や産業機器にとどまっていたエレクトロニクスが、社会やインフラという世界にまで入り込んできたことによって、新しい言葉「デジタル化」が登場した。デジタルとはエレクトロニクスの言い換えであり、決して新しい言葉ではないが、社会やインフラの世界から見ると非常に新しい飛びつきやすい言葉なのだ。

デジタル化というのは、エレクトロニクス・半導体が普及するということであり、半導体はこれからの世界のインフラとなるものだ。第2回では、デジタル化で世界のどこが変わるのか、何ができるようになるのかということに触れ、第3回では、企業に脅威をもたらしたウーバライゼーションについて述べていく。

Writer

津田 建二(つだ けんじ)

国際技術ジャーナリスト、技術アナリスト

現在、英文・和文のフリー技術ジャーナリスト。
30数年間、半導体産業を取材してきた経験を生かし、ブログ(newsandchips.com)や分析記事で半導体産業にさまざまな提案をしている。セミコンポータル(www.semiconportal.com)編集長を務めながら、マイナビニュースの連載「カーエレクトロニクス」のコラムニスト。

半導体デバイスの開発等に従事後、日経マグロウヒル社(現在日経BP社)にて「日経エレクトロニクス」の記者に。その後、「日経マイクロデバイス」、英文誌「Nikkei Electronics Asia」、「Electronic Business Japan」、「Design News Japan」、「Semiconductor International日本版」を相次いで創刊。2007年6月にフリーランスの国際技術ジャーナリストとして独立。書籍「メガトレンド 半導体2014-2023」(日経BP社刊)、「知らなきゃヤバイ! 半導体、この成長産業を手放すな」、「欧州ファブレス半導体産業の真実」(共に日刊工業新聞社刊)、「グリーン半導体技術の最新動向と新ビジネス2011」(インプレス刊)など。

http://newsandchips.com/

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