No.019 特集:データ×テクノロジーの融合が生み出す未来

No.020

特集:データ×テクノロジーの融合が生み出す未来

Expert Interviewエキスパートインタビュー

── ビロングはどのようなビジネスモデルになっていますか?どこから収入を得ているのでしょうか?

ビロングは昨年からビジネスモデルを変換させてきました。その中で医療機関と提携し、上述した患者向けのエンゲージメント・ツールを提供するようになりました。ビロングで利用しているツールの一部を特定の機関で使えるようにするわけですが、たとえば「患者サポート・プログラム」では、病院が独自のアプリを患者にダウンロードしてもらい、そこで医療チームとやりとりしたり、患者が感染したり急病になったりしないように生活の質を保つための情報を提供したりします。医療費を削減するのに、大きく貢献できるはずです。

この患者サポート・プログラムでは、次の診療の予定を入れたり、病院は来週工事しますといった情報を流したり、近く手術をするということであれば、ビデオやドキュメントを利用して手続きのプロセスを説明したりすることも可能です。こうしたことがすべて自動化されるのです。

[写真4]予定治療マップ
提供:Belong.life
予定治療マップ
[写真5]アプリ上のァイルや文書はフォルダで整理・管理が可能
提供:Belong.life
アプリ上のァイルや文書はフォルダで整理・管理が可能

── もともとのビロングはBtoCのサービスでしたが、それがBtoBtoCにも拡張したということですね。

そうです。さらにこの患者サポート・プログラムはがんだけでなく、ほかの病気や病院以外の医薬品会社や患者支援組織、保険会社などにも広げようとしています。このサポート・プログラムは、特定の病気や医薬品の周りに「患者のエンゲージメント(絆)」を構築するのに役立つからです。ビロングが持っている患者ユーザー数の大きさもそうですが、患者がエンゲージする度合いは、これまでになかったレベルのものです。

── 特定の機関にサポート・プログラムを提供しても、それは背後でビロングのコミュニティ全体につながるのでしょうか?

それは、その機関の選択によります。「自分たちの閉じた環境を維持したい」というところもあれば、「ビロングのコミュニティ全体につなげよう」というところもある。我々としては後者をすすめていますが、それはつながることによって患者ユーザーのエンゲージメントが向上するからです。

── 5年後には、ビロングはどのように発展していると思いますか?

私は母をがんで亡くしたため、個人的にパッションを持っています。その中で、二つの目標を持つにいたりました。

ひとつは、がん患者が直面するあらゆるところに関わって、彼らの孤独や恐怖をなくしたい。がんを抱える人たちは、情報がなく選択肢が見えないので、いつも「何かを失っている」という心理的状態に置かれています。ですから、患者一人ひとりの助けになりたいのです。もうひとつは、患者のエンゲージメントに関する我々の知識を利用して、すべての病気に関わりたいということです。とくに、多くの人々の命を奪っている慢性病と闘いたいと考えています。

イラッド・ドイチ氏

Profile

イラッド・ドイチ(Irad Deutsch)

ビロング(Belong.life)共同創設者、CTO

データベースやアナリティクス、ビッグデータの専門家として18年以上の、またモバイルやソーシャル・マーケティングにおいて8年以上の経験を持つ。これまで、ITインテグレーションやデータベース、ビッグデータに関わるスタートアップを数社創設し、大手企業に売却した経験を持つ連続起業家。ビロングは2015年に創設。イスラエルとニューヨークを拠点にして、全世界130か国にユーザーを抱えている。イギリスのオンライン大学、オープン・ユニバーシティーを通じて、コンピュータ科学とビジネス管理を学んだ。

Writer

瀧口 範子(たきぐち のりこ)

フリーランスの編集者・ジャーナリスト。

上智大学外国学部ドイツ語学科卒業。雑誌社で編集者を務めたあと、フリーランスに。1996-98年にフルブライト奨学生として(ジャーナリスト・プログラム)、スタンフォード大学工学部コンピューター・サイエンス学科にて客員研究員。現在はシリコンバレーに在住し、テクノロジー、ビジネス、文化一般に関する記事を新聞や雑誌に幅広く寄稿する。著書に『行動主義:レム・コールハース ドキュメント』(TOTO出版)『にほんの建築家:伊東豊雄観察記』(TOTO出版)、訳書に 『ソフトウェアの達人たち(Bringing Design to Software)』(アジソンウェスレイ・ジャパン刊)、『エンジニアの心象風景:ピーター・ライス自伝』(鹿島出版会 共訳)、『人工知能は敵か味方か』(日経BP社)などがある。

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