No.019 特集:データ×テクノロジーの融合が生み出す未来

No.020

特集:データ×テクノロジーの融合が生み出す未来

Expert Interviewエキスパートインタビュー

── 初めてeハイウェイの映像(動画1)を見た時、架線から取った電気で走る「トロリーバス」を思い浮かべました。とはいえ、両者には大きな違いがあるんですよね?

[動画1]Siemens eHighway Animation Port Application
提供:Siemens

映像を見ていただくとわかるように、「OH-Lkw*2」と呼ばれるこのEVトラックは屋根の上のパンタグラフを使って架線にドッキングします。このパンタグラフには新しい技術が使われており、センサが上の架線を自動的に感知します。運転手は何も操作する必要がありません。というのも、仕事に影響が出ないように、運転手の操作はできるだけ少ないほうがいいからです。このシステムなら、運転手がわざわざ教習を受けに行く必要はありません。

── 電車のようにレールがない中で、架線の下を走り続けるのは難しいイメージがあるのですが……。

EVトラックには車線逸脱防止支援システムが設置されており、正面と両側のカメラによりトラックが常に架線の下を走るよう修正してくれます。数cmの小さな揺れは問題ありません。運転手が操縦しなくても、トラックは架線の下を走り続ける。前方に事故現場があって車が避けないといけないような場合には、パンタグラフが自動的に下がってくるので、トラックは障害物を普通に避けることができます。

このEVトラックはハイブリッド車になっているため、架線がない場所でも走れます。これが、トロリーバスとの大きな違いです。架線区間を走っている間はバッテリーに充電され、そこから出ても20kmぐらいは電気の力で走行できます。街中で荷物を下ろし、再びeハイウェイに戻る。普通はそれで事足りますが、仮にバッテリーが切れても、ディーゼルのモーターで走ることが可能です。

── テスト区間についてご説明いただけますか?

[写真1]eハイウェイのテスト区間を示す標識。実際テスト区間にも掲げられている
eハイウェイのテスト区間を示すもので、実際テスト区間にも掲げられている

フランクフルトから南のダルムシュタット(正確にはランゲン/メルフェルデンとヴァイターシュタット)までのアウトバーンA5の5km、往復合わせて10kmのテスト区間があります。EVトラックは現在1台だけですが、スウェーデンのスカニア(SCANIA)社*3とドイツのシーメンス社の協力によって追加で製造されており、2020年の半ばまでに合計5台に増える予定です。スカニア社はスウェーデンの試行で自社のトラックを走らせているので、ノウハウがあります。シーメンス社は主にパンタグラフを、スカニア社はトラック本体の技術を担当しています。

── この実験区間ではどのようなデータが得られ、そのデータはどのように活用されるのでしょうか?

EVトラックを獲得した運輸会社(1台目はシャンツ社)は1日最低3回走行し、そのデータを記録していきます。1kmごとの電気消費量、架線を走った時間、何か障害物があってそこを避けなければならなかったケースなどを含め、トラックに関する情報はすべて記録し、そのデータを我々が得ています。それらは今後、別の場所のテストにも生かされることになるでしょう。

── 今後テストされる場所は具体的に決まっているのでしょうか?

ドイツで予定されているテスト区間は2つです。北のシュレスヴィヒ=ホルシュタイン州と南のバーデン=ヴュルテンベルク州。そちらでも、それぞれ5台のEVトラックが走ることになっています。ヘッセン州とは(交通や物流の)状況がまた異なる地域なので、より多様なテスト結果が得られるはずです。

[ 脚注 ]

*2
OH-Lkw:“Oberleitungs-Hybrid-Lkw”の略で、架線から供給された電気で走る大型HVトラックのこと。
*3
スカニア(SCANIA)社:スウェーデンの重工業会社。大型トラックの分野ではダイムラー、ボルボに次いで世界第3位の生産台数を持つ。
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