No.021 特集:デジタルテクノロジーが拓くエンターテインメント新時代

No.021

特集:デジタルテクノロジーが拓くエンターテインメント新時代

連載01

5Gの性能を左右する半導体とは何か?

Series Report

海外の5Gサービス開始状況

韓国では、2019年4月に通信大手3社、KT(Korea Telecom)、SK Telecom、LG Uplusが競い合うように5G通信サービスを始めた。サブ6GHz帯の3.5GHzを使う。韓国では、4GのLTEと共存するNSA(Non-Stand Alone)方式を使い、LTEのキャリアアグリゲーション(通信周波数帯域をいくつかまとめてデータレートを高速にする技術)によってデータレートを上げ、5Gとしている。現時点では10Gbpsどころか1Gbpsにも達していない。

アメリカでは、韓国を意識して2019年4月に大手通信サービス業者のベライゾンがシカゴとミネアポリスという100万人以上の都市の一部で5Gサービスを始めた。韓国同様、NSA方式を使用、5G通信エリアの外に出るとVerizonの既存LTEネットワークにつながるようになっている。対応機種はモトローラのz3、またはz4スマホ。ベライゾンの5Gは28GHz帯と39GHz帯のミリ波を使うことになっているが、4月にサービスを始めた通信周波数は28GHz帯。サービス開始には独自規格を採用しているという。通信速度標準300〜400Mbps、最大1Gbpsで、レイテンシー(遅延)は30ms(ミリ秒)*4としている。

ヨーロッパではスイス最大の通信会社スイスコム(Swisscom)が国内90%のエリアで5Gサービスを2019年までに開始すると発表している。またボーダフォン ルーマニア(Vodafone Romania)は、ルーマニアの一部で5月から5Gサービスを開始した。国内メーカーの対応端末は2019年の夏から入手できるとしている。

中国では、2020年に商用化サービスを開始する。当初中国では、SA方式を採用すると表明していたが、やはりLTEとも共用できるNSA方式に切り替えたという。中国最大の通信業者の中国移動(China Mobile)は2.515GHz~2.675GHzと4.8GHz〜4.9GHzの周波数帯を使う。中国電信(China Telecom)は3.4GHz〜3.5GHzを使うが、2.635GHz~2.655GHzの周波数帯のライセンスも取得している。中国ユニコム(China Unicom)は2020年6月までに3.5GHz~3.6GHzの周波数帯の認可を得て5G通信サービスを始める。

このように5Gサービスが一部で始まったとはいえ、残念ながらまだ4Gの延長と言わざるを得ない。5Gの目標に到達していないからだ。明確に言えることは、5G通信はサービス開始から目標のデータレート達成まで、2020年代を通して進化していく規格だということである。

5Gの特長は三つ

改めて5G通信の特長を整理してみると、現在のレベルがよくわかる。特長は主に三つある。高速・大容量のデータ速度、低遅延、多デバイス接続、である。最初の高速のデータ速度では、ダウンロードする速度が最大20Gbps、アップロードする速度は最大10Gbpsとなっている。現在のレベルは、ダウンロードの場合でもまだ1Gbpsにも達しない。5Gは欧州3GPPで規格が決められているが、ベライゾンは独自方式を取っており、3GPPの標準規格に沿っていない。

もう一つの特長は、レイテンシーが1ms以下と短いことだ。携帯端末と基地局との送受信の遅延がほとんどないため、応答速度がリアルタイム動作できることになる。ここでは基地局では演算せず、単なる送受信しか規定されていない。例えば、端末から基地局のデータを送り、その中でAI(ディープラーニング)のような演算処理をしない場合に限定している。演算処理を含めるとコンピュータ内部の演算速度が支配することになり、通信速度を規定することにはならないからだ。ちなみに、ベライゾンのレイテンシーは30msなので、まだ目標には達していないことがわかる。

三つ目の特長は、携帯電話だけではなく、それ以外のデバイスにも対応できるという点だ。これまでの1Gすなわちアナログ携帯電話から始まり、2Gのデジタル電話、3Gの高速デジタル電話、4Gの超高速携帯電話へと発展してきた流れは、全て携帯電話に主眼が置かれていた。5Gでは携帯電話プラスIoT(モノのインターネット)デバイスやクルマなどにも使え、あらゆるモノが無線でつながる時代になる。

5GはさまざまなモノがインターネットとつながるIoTが活躍する場でもある。例えばクルマとインターネットをつなげてもリアルタイムで反応できなくては使いにくい。また、VRのようにグラフィックス映像を描くような演算が必要な応用でもリアルタイムで動かなくては使いものにならない。

[ 脚注 ]

*4
ms(ミリ秒): ミリ秒は1/1000秒のこと。ここではほぼリアルタイムで応答することを表している。
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